セッション情報 理事長講演

タイトル CL:

Next Centennialに向けて

演者 菅野 健太郎(自治医科大学消化器内科)
共同演者
抄録  日本消化器病学会は1898年創立以来すでに110年を越す歴史を有している.しかし,発足当初は毎年学術集会が開催されていなかったこと,戦争等による中断もあり,今回の総会が第100回という記念すべき節目となる.我が国の存亡のかかった世紀の試練に耐えて継続されてきた総会が100回を迎えるこの機会に,我々は,これまで運営の成功と発展に貢献されてこられた先人の多大な努力と情熱に深く感謝するとともに,将来を見据えた新たな一歩を踏み出すための課題と展望を考える責務がある.
 学術集会は,新しい研究知見の発表と検証の場でもあることはいうまでもないが,それは発表や討論を通じて若い研究者を育成・教育する場でもあり,専門的領域の学術交流の機会も提供する意義も大きい.優れた研究発表に対する論文作成支援,論文依頼,表彰等も考慮すべきであろう.これまでの先人の努力によって我が国の消化器病学が国際的に高く評価されている現在,学術集会の国際化によって単に我が国の消化器研究だけではなく,アジア太平洋地域のみならず,欧州や米国消化器病学会との連携をさらに深化させていくことは,今後の学会の使命の一つでもある.
 学会の継続的発展には,若い医師が学会に加盟し,きちんとした専門医トレーニングを受け,学会活動に参加していくことが必須である.そのために,研修医の学会参加,ハンズオンセミナー,専門医研修カリキュラムの作成,海外学会参加補助などを実施してきているが,これらをさらに充実させていくことが重要である.
 学術活動は社会と無縁の活動ではない以上,学術活動の社会への貢献,社会との交流が必要であることは自明である.幸い日本消化器病学会は他の学会にさきがけ,市民公開講座,市民向け健康情報誌や疾病ガイドブックの発刊,市民向けホームページなどを行ってきたが,これらの活動に加え,インターネット調査等により国民の声を聴取し,その要請に答えるよう尽力していく必要があると思われる.特に疾病予防の観点からこれまでやや不十分であった食育,生活習慣等について,他領域の専門家と協力しながら積極的に取り組んでいくべきであろう.
 これらのさまざまな活動には会員との双方向性情報伝達が必須であり,学会の行っている種々の活動への会員の参加と,利便性を考えたホームページ等の構築,会員の意見の収集等への取り組みがますます重要となってくる.
 このように考えると,学会は学会会員のみならず,医師や国民,国際社会における価値の創造とそのValue Setを高めていく使命を有しており,それには会員からの活動参加,支援とそれに答えるべき執行部の情熱と一層の創意工夫への努力が必要である.
索引用語