セッション情報 記念講演

タイトル ML:

日本の臨床研究の問題点と将来の方向

演者 井村 裕夫(公益財団法人先端医療振興財団)
共同演者
抄録  臨床研究は疾患の成因の解明,診断・治療法の開発,予防を目指したきわめて幅の広い研究分野である.大別すると疾患指向型研究(DOR)と患者指向型研究(POR)に分けることができる.前者は直接人を対象とするものではなく,患者から得られた遺伝子,細胞などの試料を用いて行う研究で,最近では遺伝子改変動物も広く用いられており,MD以外の研究者も実施できる.一方PORは直接人を対象として行う研究で,観察型研究(例えば,コホート研究)と介入型研究(臨床試験)に分けることができ,医師研究者(physician scientist)が主導しなければならない分野である.わが国の問題点はこのPORが著しく遅れていることで,そのためPORのみを掲載する一流誌への掲載が著しく少ない.その理由は単一ではなく,わが国の医療制度も関わっているところがあるが,もっとも大きな問題はPORの成果が評価されてこなかったことと,PORに精通した人材を育成してこなかったことであり,この点の改革が喫緊の課題であると考えられる.そうした状況の下で今後なすべき課題,とくに薬剤の開発と臨床試験の在り方と,予防とくに先制医療の重要性について述べる.
索引用語