セッション情報 医療パネルディスカッション第1部

消化器病学と医療現場のDiscrepancy(乖離)

タイトル SPD1-3:

全国的に汎用される医療技術と保険適用の乖離

演者 小早川 雅男(国立国際医療研究センター消化器内科)
共同演者
抄録 わが国の消化器医は世界でも最も卓越した診断および治療技術を有しており全国的に様々な診療技術が行われている.しかし,実際には保険適用されていない医療技術もあり,臨床現場では多くの問題を抱え込んでいる.前半では保険適応への過程について説明し,後半でBRTOを例に具体的な解決策について述べる.(1)保険適用への過程 適応外で使用されている医薬品あるいは,新規性の高い医療機器の保険適用には薬事承認が必要であるため,治験等の実施が求められ,医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて有用性と安全性が評価される.一方,薬事承認の必要のない医療技術の場合は,学会が内科系保険連合(内保連),外科系保険連合(外保連)へ要望書を提出し,これを中医協が議論した上で保険収載となる.その他,薬事承認および保険収載までの道筋として,医師主導治験,先進医療,医療上の必要性の高い未承認薬適応外薬検討会議(未承認薬検討会議)への要望等があるが,薬剤や医療機器の薬事承認の有無がゴールまでの大きなハードルと言える.(2)保険適用への解決策 全国的に汎用される医療技術で保険適用されていないものの一つに,国内で発展してきた胃静脈瘤に対するBRTOが挙げられる.これまで,消化器病学会は内保連を通して保険適用の要望書を提出してきたが,使用されるモノエタノールアミンオレイン酸塩(EO)が胃静脈瘤に対して適応外使用であることが問題となり,医療技術としてのBRTOは保険収載されないままであった.また,消化器病学会は未承認薬検討会議にEOの胃静脈瘤への適応追加について要望書を提出したが,要望医薬品が海外で広く使用されているという基準を満たさなかった.しかし,海外で薬事承認がないことを理由に未承認薬検討会議で開発要望されなかった医薬品について,日本医師会は医師主導治験を行うための研究を公募しており,消化器病学会によるEOの治験薬候補として推薦が採択された.現在,BRTOに対するEOの医師主導治験の計画が進められている.
索引用語