抄録 |
若年医師について述べよという容易ではない題名を拝命し,自施設の状況を踏まえて以下のような私見を述べさせていただく予定である.新臨床研修制度により2年間の医師無入局期間と続くメジャー科の敬遠傾向から,当科では新臨床研修制度導入後4年間で1名しか入局者がいないという危機的な状況を迎えた.結果,卒年数の医師数に大きな差ができ,指導や派遣に大きな影響を今でももたらしている.入局者の激減により,当院の派遣病院も例にもれず,地方病院で医師の引き上げや,激務化した熟練医師の退職が起こった.従来,地方病院への派遣は熟練医師と一緒に働く臨床勉強の機会であり,若年医師にとって利点であった.しかし,近年は少数の若年者で診療をせざるを得ない病院も見受けられ,さらに派遣を困難にしている.もちろん,新臨床研修による身分の保証は大きく,未熟な医師の出張診療がなくなるなど良い点はある.しかし,新臨床研修制度での教育は十分なものとは感じられず,消化器科として直ちに入局した頃の3年目と現在の専修医1年目とでは当然だが消化器科医師としての能力は大きく異なる.消化器科医師に求められる内視鏡技術の会得には時間と経験を要する.早く必要な能力を持たすため教育システムを構築したが,本人の意気が不可欠である.近年,この意気には個人差が感じられ,一部システムに頼る傾向が感じられる.新臨床研修は自分の専門の決定を遅らせており,その傾向は専修医になっても引き継がれ,自分の専門を決定できない若者が多い.そこには情報と選択肢の多さが影響していると考えられる.この傾向は専門医や研究者の養成を遅らしている.近年は医療崩壊が声高に報道され,メジャー診療科の志望回帰傾向を感じるが,それでも新年度のメジャー科志望研修医が当院で40%程度であり十分回復したとは言えない.以上最近の若年消化器科医師について思うことを述べたが,消化器という厳しい分野を最終的に選んでいることもあり,入ってくる消化器科医師は変わらず優秀であることに間違いはなく,希望をつなぐ点である. |