抄録 |
かつて騒がれた医療崩壊はそのころ大学病院に勤務していた私にとって政治を志すきっかけとなった.新研修医制度や医療保険の仕組みなど,医療現場の現状が十分に反映されないで医療の仕組みが決まっていると感じ,医学の進歩以上に医療の仕組みにかかわることが病気に苦しむ患者さんを助けることにつながると考えた.医者も政治にかかわる人間も目指すところは同じである.医師の地域偏在や専門科偏在を解決するうえでのポイントは,医学教育と卒後教育をいかにして結び付けるかである.新研修医制度で大学の医局の存在感がなくなり,それが地域医療の崩壊を加速させたといわれているが,かつての大学の医局は医学教育と卒後教育をつなぐ役割を担っていた.医学部医学科の学生はほとんどが医師になる.しかし大学教育は文部科学省のもと他の学部と同じように教育や研究の仕組みが作られ,卒後医学教育は厚生労働省のもと地域への医師配置を含めカリュキュラムが作られる.そこには密な連携が必要である.新しい専門医制度も大学での医学教育とリンクしたものでなければならない.本セッションでは,医師の地域偏在や専門科偏在を大学教育と卒後教育という観点を中心にのべ,地域医療における消化器病学の役割を論じてみたい. |