セッション情報 シンポジウム1

消化管幹細胞研究の新たな展開

タイトル S1-1:

消化器癌における癌幹細胞研究

演者 石井 秀始(大阪大学消化器癌先進化学療法開発学)
共同演者 土岐 祐一郎(大阪大学消化器外科), 森 正樹(大阪大学消化器外科)
抄録 難治性消化器の治療戦略において,癌幹細胞の考え方は有効な診断および治療方法を策定する上で重要である.Dick博士が白血病幹細胞を報告し(1997年),私達は消化器癌の癌幹細胞を初めて報告した(2006年).癌幹細胞は放射線療法や抗癌剤療法後に局所で残存し,転移再発への関わりが示唆されている.(1)癌幹細胞の標的化:活性酸素(ROS)の制御が正常とともに癌幹細胞の制御において重要な役割を担う.ROS制御は癌幹細胞の酸化ストレス応答を通じて放射線・抗癌剤の治療後に局所低酸素環境中で残存する癌幹細胞を補足したために倫理委員会を経て臨床材料の検討を進め候補分子を探索した結果,既報に加えて新規の分子が同定された.CD13,CD44やALDH等の共通分子基盤として癌幹細胞の代謝特性に関わる分子が含まれていた.細胞周期静止期にある癌幹細胞を可視化し(セミ)ハイスループットスクリーニングにより阻害化合物の同定を進めている.(2)革新的な創薬シーズ:診断および治療の観点から機能性核酸分子としてマイクロRNA等の核酸医薬の応用は期待されている.マイクロRNAを用いることにより癌細胞でも正常細胞に類似したリプログラミング誘導への応答性があり,後天的ゲノム修飾(エピジェネティック分子基盤)を介して癌細胞の悪性形質が大きく変化することから,ウイルスベクター転写因子以外の誘導方法を研究し,将来の医療応用を見据えた核酸医薬により難治性消化器癌細胞の形質制御,不活性化制御が可能であることを示唆された.これらは治療抵抗性の癌幹細胞を確実に根絶化するための理解から創薬へ新しい医薬品シーズに応用できる可能性がある.私達の最近の成果を踏まえながら難治性消化器のアカデミア創薬を考えたい.
索引用語