セッション情報 シンポジウム1

消化管幹細胞研究の新たな展開

タイトル S1-4:

iPS細胞からiGutの作製

演者 中島 祥介(奈良県立医科大学消化器・総合外科学)
共同演者 植田 剛(奈良県立医科大学消化器・総合外科学), 山田 高嗣(奈良県立医科大学消化器・総合外科学)
抄録 【背景と目的】多能性幹細胞は,次世代医療の展開に貢献する細胞として期待が持たれている.今回,ES細胞を用いた独自の研究実績をもとに,iPS細胞から立体臓器,人工腸管(iGut)を分化誘導できるか,世界初のin vitroでの臓器作製を試みた.
【方法と結果】iPS細胞(iPS-MEF-Ng-20D-17)を用い,胚様体(embryoid body:EB)の形成に懸垂培養系を導入した.hanging drop1滴あたりのiPS細胞数は500個,培養液量は15μlに調整,6日間培養してEBを作製した.EBを付着培養系に移して培養を継続,付着培養7日目に不規則なリズムで自動収縮する組織塊を認めた.10-14日目には管状構造となり,運動も規則正しい自動収縮へと変化,21日目には高度に調節された大きく波打つような管腔内の内容物を搾り出す動き(蠕動運動)が観察された.免疫組織学的解析では,壁内に平滑筋細胞であるSMA陽性細胞が円筒状に存在し,Cajal間質細胞(ICC)であるc-Kit陽性細胞が緻密なネットワークを,NF染色では壁内および壁周囲に神経・神経節からなる神経ネットワークを形成していた.電子顕微鏡による解析では,管腔状の最内層に微絨毛を有するGoblet細胞,Tuft細胞,内分泌細胞などの粘膜上皮細胞を,その外側に平滑筋組織やICCを,最外層に漿膜を認めた.以上より,三胚葉系全ての要素が一定の秩序で配列し,独立した特定の形態・機能を有する立体臓器である人工腸管(iGut)であることを確認した.
【結論】iPS細胞を用いて,立体臓器である人工腸管(iGut)をin vitroで分化誘導することに初めて成功した.このことはin vitroでの臓器作出も不可能ではないことを示している.今後は,そのメカニズム解明と各種細胞・各種臓器作出の研究を進めるとともに,次世代医療の展開への応用の可能性を探りたい.
索引用語