セッション情報 |
シンポジウム2
消化管癌の分子病態学に関する進歩
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タイトル |
S2-1:食道扁平上皮におけるアルコール関連発癌機序の解明
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演者 |
天沼 裕介(京都大学消化器内科) |
共同演者 |
大橋 真也(京都大学腫瘍薬物治療学講座), 武藤 学(京都大学腫瘍薬物治療学講座) |
抄録 |
【目的】国際癌研究機関はアルコール飲料に関連するアセトアルデヒド(AA)を食道癌のGroup1発癌物質と認定したがその機序は不明である.本研究はAAによる食道発癌の分子病態を明らかにすることを目的とする.【方法】食道癌患者の非癌部食道生検からDNAを抽出し,AA由来DNA傷害の指標であるDNA adductをLC/MS/MSで測定し,内視鏡検査におけるヨード不染帯の程度(A群;不染帯なし:8例,B群;1~10/1視野:20例,C群;11以上/1視野:32例)との相関を検討した.基礎的実験として,ALDH2野生型及びノックアウトマウスに10%アルコールを8週間自由飲酒させ,食道のDNA adduct,γH2AX,ALDH2発現を検討した.In vitroでは,ヒト食道扁平上皮細胞株にAAを0.2~1mMの濃度で曝露し,DNA adduct,γH2AX,ALDH2発現を検討した.さらにsiRNAでALDH2発現を抑制した食道上皮細胞株にAAを同様の条件で添加し,DNA損傷の程度を検討した.【結果】108塩基対あたりのmedian DNA adduct量(Q1,Q3)はA群:0.34(0.02,0.46),B群:0.22(0.07,0.61),C群:0.81(0.20,4.94)で,高度の不染帯群(C群)でAAによるDNA傷害が有意に増加した.マウスへのアルコール投与では,ALDH2ノックアウトマウスは野生型マウスと比較しAA曝露による食道のDNA adduct,γH2AX発現が有意に増加した.ALDH2野生型マウスの飲酒群では,食道上皮にALDH2の発現誘導がみられた.ヒト食道上皮細胞株においてもAA濃度依存性にDNA adduct,γH2AXが産生された.さらに3種類のヒト食道上皮細胞株で,AAによるALDH2の発現誘導がみられた.ALDH2発現抑制細胞株にAA曝露すると,DNA adduct量がさらに上昇しAAによる細胞傷害が増強した.【結論】多発ヨード不染を伴う食道癌症例では,非癌部においてもAAによる高度のDNA傷害が生じていた.食道上皮のALDH2発現誘導はAAに対する防御的機構と考えられ,ALDH2機能低下では,食道上皮のDNA傷害が蓄積された.これらの結果よりAAによるDNA損傷が食道発癌の分子病態であると示唆された. |
索引用語 |
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