セッション情報 シンポジウム2

消化管癌の分子病態学に関する進歩

タイトル S2-5:

胃癌の増殖進展に関与する癌微小環境の分子病態:胃癌細胞―線維芽細胞相互作用における低酸素の影響

演者 木下 春人(大阪市立大学大学院腫瘍外科)
共同演者 八代 正和(大阪市立大学大学院腫瘍外科), 平川 弘聖(大阪市立大学大学院腫瘍外科)
抄録 【背景】我々は,胃癌細胞の増殖進展には癌微小環境に存在する癌関連線維芽細胞(cancer-associate fibroblasts:CAF)が関与すること,また胃癌組織は低酸素領域が多く低酸素状態の胃癌は臨床的に悪性度が高いことを明らかにしてきた.これらの結果から,胃癌の病態解明には間質細胞のみならず酸素環境を含めた解析の必要性が示唆された.そこで今回,胃癌細胞とCAFとの相互作用におよぼす酸素環境の影響を分子生物学的に検討した.【方法】通常酸素(20%O2)および低酸素(1%O2)にて胃癌細胞とCAFを共培養し,胃癌細胞増殖能や遊走能に与える影響を細胞数算定にて検討した.また,低酸素環境が胃癌細胞やCAFの増殖因子(CXCL12,HGF)産生や増殖因子受容体(CXCR4,cMet)発現におよぼす影響を,ELISAやRT-PCRにて検討した.さらに,増殖因子(CXCL12,HGF)やCAF培養上清が胃癌細胞の増殖能や遊走能に与える影響について検討し,CXCR4阻害剤やc-Met阻害剤が胃癌細胞と線維芽細胞との相互作用におよぼす影響を検討した.【結果】低酸素状態により,CAFは胃癌細胞の増殖能や遊走能をより強く促進した.低酸素は,胃癌細胞のCXCR4発現を有意に亢進させ,またCAFのCXCL12産生を亢進させた.低酸素環境において,CXCL12は胃癌細胞の増殖を促進した.さらに,CXCR4阻害剤はCAFの胃癌細胞増殖促進作用を抑制した.また,HGFは胃癌細胞の遊走を促進し,c-Met阻害剤はCAFの胃癌細胞遊走促進作用を抑制した.【結論】低酸素環境は胃癌細胞と線維芽細胞との相互作用をより促進し,CXCL12/CXCR4やHGF/c-Metがその相互作用に関与するシグナルであることが示唆された.
索引用語