セッション情報 シンポジウム2

消化管癌の分子病態学に関する進歩

タイトル S2-7[追]:

胃癌背景粘膜におけるLINE-1メチル化レベル及びCD44とHelicobacter pylori感染の解析

演者 小澄 敬祐(熊本大学消化器外科学)
共同演者 馬場 祥史(熊本大学消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大学消化器外科学)
抄録 【背景】癌細胞に認めるエピジェネティックな異常の一つにDNAメチル化異常がある.DNAメチル化異常には,ゲノム全体の低メチル化と遺伝子プロモーター領域の部分的高メチル化があり,ゲノム全体の低メチル化はゲノム不安定性を誘発し発癌に寄与する.LINE-1はゲノム全体の約17%を占める転移因子で,LINE-1メチル化レベルはゲノム全体のメチル化レベルの指標となる.一方,癌幹細胞マーカーとして注目されるCD44は,ROSへの抵抗性を高めることで癌幹細胞の維持に関与する事が報告されている.Helicobacter pylori(Hp)は慢性胃炎・胃癌の危険因子であることから,“Epigenetic field defect=エピジェネティックな発癌素地”への関与が強く示唆される.今回,胃癌症例を対象にHp感染と背景粘膜のLINE-1メチル化レベル及びCD44発現,臨床病理学的因子の関連を解析した.【方法】当科の胃癌切除46例を対象に,Hp感染群と非感染群に分類し,比較した.LINE-1メチル化レベルはBisulfite-Pyrosequecing technologyを用いて測定した.CD44の発現は免疫染色にてHigh/Lowで評価した.【結果】感染群(24例)は非感染群(22例)に比べて有意に若年だった(P=0.016).両群の非癌部胃粘膜LINE-1メチル化レベルは54.1-90.1%(Mean79.2,SD6.1)で,感染群は非感染群より有意に低かった(P=0.037).癌部のLINE-1メチル化レベルは両群間に有意差なし(P=0.72).感染群は非感染群に比べてCD44 Highが多かったが(P=0.0079),LINE-1メチル化レベルとCD44発現に直接的な関連性は認めなかった(P=0.68).【考察】LINE-1低メチル化は癌幹細胞マーカーであるCD44発現との相関性を示さなかったものの,Hp感染による“Epigenetic field defect”のsurrogate markerとして有望であることが示唆された.
索引用語