セッション情報 |
シンポジウム2
消化管癌の分子病態学に関する進歩
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タイトル |
S2-9:MFG-E8による大腸癌の発生・浸潤の促進―インテグリンを介した細胞増殖と血管新生の分子機構―
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演者 |
楠 龍策(島根大学医学部内科学講座第二) |
共同演者 |
石原 俊治(島根大学医学部内科学講座第二), 木下 芳一(島根大学医学部内科学講座第二) |
抄録 |
【目的】MFG-E8(Milk-fat globuluer EGF 8)は分泌型蛋白で,アポトーシス細胞の貪食を促進し生体の恒常性維持を担っている.一方,最近ではMFG-E8が多様な機能を有することが報告されている.我々は大腸腫瘍の発生と進展におけるMFG-E8の機能解析を行い治療応用について考察した.【方法】(1)MFG-E8ノックアウト(KO)マウスを用いて,アゾキシメタン(AOM)とデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の投与により炎症性大腸癌モデルを作成し野生型マウス(WT)と比較した.KOマウスから樹立した骨髄キメラマウスにおいても同様の検討をおこなった.(2)AOM投与のみで発症するsporadic大腸癌モデルを作成しWTマウスと比較した.(3)大腸癌細胞Colon26にMFG-E8を投与し細胞増殖能を検討した.さらにMFG-E8が結合するインテグリンα5β3の機能を中和抗体やsiRNAで阻害し細胞増殖におけるインテグリンの特異性を評価した.(4)血管新生におけるMFG-E8の影響をPCRアレイで検討した.(5)ヒト大腸腫瘍組織のMFG-E8発現を免疫染色で評価した.【結果】(1)炎症発癌モデルにおいて,KOマウスではWTマウスよりも形成される腫瘍数が有意に減少した.キメラマウスでも同様の結果であった.(2)sporadic大腸癌モデルにおいても,腫瘍数や腫瘍径が減少した.(3)精製MFG-E8はインテグリンを介してColon 26細胞の増殖を促進した.(4)MFG-E8はVEGFなど様々な血管新生因子の発現を制御していた.(5)ヒト大腸腫瘍では悪性度と浸潤にともなって発現が増強した.【結論】大腸腫瘍の発生過程においては,主に血球系細胞由来のMFG-E8がインテグリンを介して腫瘍発生に促進的に作用した.腫瘍発生後は進展とともに腫瘍におけるMFG-E8発現が誘導され,自身の増殖と血管新生を介して腫瘍浸潤に関わる可能性が示唆された. |
索引用語 |
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