セッション情報 シンポジウム2

消化管癌の分子病態学に関する進歩

タイトル S2-11[追]:

大腸癌の分子診断・標的治療の新規バイオマーカーとしてのmicroRNA-31の可能性

演者 五十嵐 央祥(札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座)
共同演者 能正 勝彦(札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座), 篠村 恭久(札幌医科大学消化器・免疫・リウマチ内科学講座)
抄録 【目的】BRAF遺伝子は,EGFR下流シグナルの活性化に重要な働きをする遺伝子であり,抗EGFR抗体薬における治療効果予測のバイオマーカーであること.また新たな発癌経路として近年,注目されているserrated pathwayにおいても高頻度にその変異が認められることから大腸癌の重要な遺伝子異常の一つと考えられる.一方,マイクロRNAの発現異常は多くの癌で報告され,新規バイオマーカーとして有望であるが,大腸癌でBRAF遺伝子を制御するマイクロRNAはこれまでに同定されていない.【方法】今回,我々は内視鏡的・外科的に切除された700症例を超える大腸癌症例を対象にFFPE標本からDNAとマイクロRNAを抽出.高感度パイロシークエンス法でBRAF遺伝子変異を解析.またマイクロRNAアレイシステムを用いて,BRAF遺伝子変異群で特異的に発現するマイクロRNAを網羅的に検討.同定された有望なマイクロRNAは定量的RT-PCRで解析し,臨床分子生物学的因子や生命予後との関連を検討した.【成績】アレイシステムによる解析の結果,microRNA-31(miR-31)がBRAF遺伝子変異群で野生型の群と比較して300倍以上発現亢進しているマイクロRNAとして同定された.720例の大腸癌症例を対象にmiR-31を定量的PCRで検討したところ,発現亢進している大腸癌の群は多変量解析でも,BRAF遺伝子変異と有意に正の相関(P<0.0001)を認め,更に大腸癌の独立した予後不良因子であることも明らかとなった.また大腸癌細胞株にmiR-31阻害剤を投与したところ抗腫瘍効果が認められ,更にWestern blot法ではBRAFの発現調節にも関わっている可能性も示唆された.【結論】miR-31はBRAF遺伝子変異や大腸癌の不良な予後とも相関が認められたことから分子診断・標的治療の新規バイオマーカーとして期待される.
索引用語