セッション情報 |
シンポジウム2
消化管癌の分子病態学に関する進歩
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タイトル |
S2-12:microRNA-18aは癌関連蛋白hnRNP A1を分解し大腸癌細胞に細胞死を誘導する
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演者 |
藤谷 幹浩(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学) |
共同演者 |
盛一 健太郎(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学), 高後 裕(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学) |
抄録 |
背景:癌細胞において複数のmicroRNA(miR)の発現異常が認められ,癌の発育・進展に関与している.この作用機序は,miRが癌関連分子のmRNAと結合し,その翻訳を制御するとされる.本研究では,大腸癌細胞においてmiR-18aが癌関連蛋白hnRNP A1と直接結合してこの蛋白を分解することで,大腸癌細胞に細胞死を誘導するという新しい癌抑制メカニズムの存在を明らかにする.方法:RT-PCR,ウエスタンブロットにより各遺伝子の発現を検討した.細胞増殖・障害はMTTアッセイ,xenograft modelで,RNAと蛋白質の結合はbindingアッセイで検討した.蛋白分解については3Hおよび14C glycineを用いた二重アイソトープ標識法にて検討した.結果:1.MTTアッセイの結果,miR-18a過剰発現大腸癌細胞株(SW620)では,細胞活性が有意に低下した.この細胞ではTUNEL陽性細胞,cleaved-caspase 3,9の発現が有意に増加していた.SW620細胞をヌードマウスに移植してxenograft modelを作成し,miR-18aを腫瘍局所に連日投与した結果,腫瘍の増大が有意に抑制された.以上からmiR-18aは大腸癌細胞に細胞死を誘導することが明らかになった.2.SW620細胞にmiR-18aを過剰発現させても,細胞死関連分子のメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳には変化がなかった.3.SW620細胞においてmiR-18aは癌関連蛋白hnRNPA1と結合していた.miR-18aの過剰発現によりhnRNP A1が持つ抗アポトーシス作用(テロメア短縮阻害やCyclin D1誘導)が減弱した.4.二重アイソトープ標識法による検討の結果,miR-18a投与によりマウス腸管におけるhnRNP A1の分解が促進した.5.miR-18aとhnRNP A1複合体はautophagy関連蛋白であるLC3と結合していること,hnRNP A1の分解はautophagy抑制剤やautophagy関連蛋白(ATG7,p62,BAG3)のsiRNAにより消失した.結論:大腸癌細胞においてmiR-18aは細胞死を誘導する.この作用はmRNAを標的としたものでは無く,癌関連蛋白であるhnRNPA1への結合と分解を介した新しい作用機序によるものと考えられた. |
索引用語 |
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