セッション情報 シンポジウム3

難治性GERDの病態と治療

タイトル S3-1:

胃食道逆流症に対するPPI治療において治療抵抗性因子:多施設共同研究による検討

演者 芥川 加代(佐賀大学医学部付属病院内科)
共同演者 坂田 資尚(佐賀大学医学部付属病院内科), 藤本 一眞(佐賀大学医学部付属病院内科)
抄録 【目的】胃食道逆流症(GERD)の治療においてはプロトンポンプ拮抗薬(PPI)が第一選択となる.PPI治療抵抗性を難治性GERDと定義して,治療抵抗性と再発関連因子について多施設共同研究の結果をもとに検討した.【方法】1)治療抵抗性を検討する目的で非びらん性を含むGERD患者193名にPPI(ラベプラゾール10mg/日)を投与し症状の改善を4週後Fスケールも用いて検討した.2)191名のびらん性GERD患者に対してPPI(ラベプラゾール)維持療法を行い1年後2年後に内視鏡で再発した症例について再発要因の因子を検討した.3)重症GERDの多い65歳以上の女性に対して6ヵ月以上PPI維持療法をしているびらん性GERD462症例について,治療効果を主治医による患者評価で検討した.【成績】1)Fスケールによる4週後の治療効果判定では,びらん性GERDに比較して非びらん性GERDのほうがPPIによる治癒率が低かった(65.2% vs. 56.8%).多変量解析で検討した結果,PPI抵抗性はびらん性GERD患者では低身長,非びらん性GERDでは女性であること,Fスケールスコアが低いこと,であった.2)内視鏡で評価したPPI維持療法では,2年後の非再発率は90%程度であった.再発危険因子は,内視鏡所見の重症度,裂孔ヘルニアの存在,ピロリ菌陰性,萎縮性胃炎(―),非喫煙,女性,低身長,であった.3)65歳以上の女性の検討では,内視鏡所見の重症度とピロリ菌陰性がPPI治療抵抗性の危険因子であった.【結論】PPI抵抗性GERDの要因を検討した結果,びらん性GERDに比較して非びらん性GERDはPPIの効果が十分でない症例が多く,女性で,Fスケールスコアが低い患者でその傾向が高いことが判明した.PPI維持療法における再発や治療抵抗性に関連する因子としては,内視鏡所見における重症度,食道裂孔ヘルニアの合併,ピロリ菌陰性,女性,低身長,が深く関連していることが判明した.
索引用語