セッション情報 シンポジウム3

難治性GERDの病態と治療

タイトル S3-6:

実臨床における機能性胸やけの診断の可能性

演者 舟木 康(愛知医科大学消化器内科消化管部門)
共同演者 井澤 晋也(愛知医科大学消化器内科消化管部門), 春日井 邦夫(愛知医科大学消化器内科消化管部門)
抄録 【目的】機能性胸やけ(FH)の診断は食道酸暴露が正常範囲内で症状と逆流に関連がなく,PPIが無効なものをFHとする.しかし,実地臨床ではPPI抵抗性逆流症状患者をいわゆる狭義のFHとして扱う場合が多い.PPI抵抗性NERD患者を対象に,食道機能検査を施行し厳密なRomaIII基準によるFH患者の診断が可能か検討を行った.【方法】常用量のPPIの内服を8週間以上継続したにもかかわらず,胸やけ症状の改善がみられないPPI抵抗性逆流症状患者90名を対象とした.食道運動障害症例を除いた67例に対し24時間MII-pHを行い,Symptom Index(S.I.)50%以上の逆流関与群と症状出現に逆流が関与しないFH群に分け患者背景,症状出現頻度の比較検討を行った.【結果】逆流関与群は食道酸曝露時間の延長を示す群(pH-POS群)20例(男性14名,平均年齢55.4±4.1歳,BMI:22.3±0.7)と食道酸曝露時間が正常であり,S.I.が50%以上の群(hypersensitive esophagus:HE群)29例(男性15名,平均年齢53.4±2.7歳,BMI:22.5±0.5)の2群分けられた.FH群(S.I.<50%)18例(男性7名,平均年齢58.8±3.1歳,BMI:21.6±0.7)であった.3群間に年齢,BMI,神経症など患者背景に差は認めなかった.症状の評価ではFSSGの総点数(p=0.4),酸逆流関連点数(p=0.3),運動不全関連点数(p=0.9),クエスト問診票(p=0.7)に差を認めなかった.胃食道逆流回数及びLES直上15cmに達する逆流回数(proximal reflux)はpH-POS群に有意に高値であったが,HEとFHに差は認めなかった(pH-POS v.s HE,pH-POS v.s FH:p<0.05).胃食道逆流回数に含まれるProximal reflux回数の割合は3群間に有意差は認めなかった(p=0.8).また,胃内酸分泌抑制率(p=0.5)に差は認めなかった.【結論】PPI不応性逆流症状患者90例中FHは18例(20%)と低率であった.逆流関連群と患者背景,症状頻度,QOLに差は認めず,厳密なFHの診断にはMII-pHが必要不可欠と思われた.今後,RomeIIIのFHの診断基準の妥当性も含めて,さらなる検討を行う事が重要である.
索引用語