セッション情報 シンポジウム3

難治性GERDの病態と治療

タイトル S3-9:

高度脊柱後弯症を合併したPPI抵抗性難治性GERD/NERD症例における脊椎矯正術の効果

演者 杉本 光繁(浜松医科大学第一内科)
共同演者 佐原 秀(浜松医科大学第一内科), 古田 隆久(浜松医科大学臨床研究管理センター)
抄録 背景と目的:脊柱後弯症は胸郭や腹腔の圧迫や容積の低下によって胃食道逆流症(GERD)を高頻度に合併することが知られ,その重症度は標準量PPIによる治療抵抗性難治性GERDの原因の一つであると考えられている.重度の脊柱後弯症は脊椎矯正術により姿勢が改善して胃食道逆流が改善すると考えられるが,PPI抵抗性難治性GERDをもつ脊柱後弯症に対して脊椎矯正術前後に胃食道逆流の程度を評価したものはない.今回,脊椎矯正術を要する脊柱後弯症例における難治性GERD/NERDの特徴を明らかにし,脊椎矯正術によるリスク変化を評価することを目的とした.方法:脊椎矯正手術を受けた高度脊柱後弯症例48名の中でPPI内服しているにもかかわらずFSSG8点以上か内視鏡的粘膜傷害をもつPPI抵抗性難治性GERD症例11名に対して,上部内視鏡,食道胃内pHモニタリング,問診票を手術前後に行い,その改善度を評価した.結果:内視鏡検査では,80.8%(34/48)の症例でLA分類Grade M以上のGERD/NERDを認め,重症度はGrade Mが43.8%(21/48),Aが8.3%(4/48),Bが8.3%(4/48),Cが10.4%(5/48)であった.PPI抵抗性GERD/NERDはGrade Nは1名,Mが8名,Bが1名,Cが1名であった.ヘルニア合併率は81.8%と高く,FSSGスコアも15.0±11.9点と高値であった.難治例の食道pH4以下の時間割合の中央値は8.1%(0.1-61.1%)であり,1日4%以上の異常酸逆流を示す症例は90.0%(9/10)で認めた.脊椎矯正術により,1日4%以上の異常酸逆流は40%の症例で消失し,FSSGは80%の症例でスコアは改善し,67%の症例で8点未満となった(8.4±6.5).内視鏡検査では,半数で粘膜傷害は改善し,増悪例は認めなかった.考案:脊椎矯正手術を要する高度の脊柱後弯は難治性GERD/NERD発症の危険因子である.難治性GERD症例でも,脊椎矯正術により酸逆流を改善した場合,その自覚症状や内視鏡的粘膜傷害も改善する例が存在し,治療戦略の一つとしてあがるかもしれない.
索引用語