セッション情報 シンポジウム3

難治性GERDの病態と治療

タイトル S3-11:

PPI抵抗性erosive GERDに対する外科的治療成績

演者 矢野 文章(東京慈恵会医科大学消化管外科)
共同演者 小村 伸朗(東京慈恵会医科大学消化管外科), 矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学外科)
抄録 【背景】難治性GERDには主に酸分泌抑制効果が不十分なことで難治となるPPI抵抗性GERDと,非酸逆流が症状・病態の主因なため適切な薬剤がなく難治となるGERDに大別できる.前者はerosive GERDが多く,後者はNERDが多い.【目的】PPI抵抗性erosive GERDに対する外科的治療成績を検討した.【対象と方法】1994年8月から2013年7月までに腹腔鏡下胃食道逆流防止手術(LARS)を施行した患者の中で,PPI常用量により逆流性食道炎が治癒せず,症状が消失しなかったことでLARSを施行した23人を対象とした(胃切離をともなう患者は除外).術前の病態はAFP分類によって評価し,LARSの治療効果を検討した.【結果】平均年齢60.7±14.8(33~83)歳,男性15人,女性8人.全員食道裂孔ヘルニアを認め,grade A2以上が11人(48%)であった.術式はNissen法5人,Toupet法18人,うち裂孔縫縮後にメッシュで補強した症例が4人であった.手術時間150±45(75~250)分,出血量7±18(≒0~60)mL,術中合併症は高度皮下気腫1人,胃管とwrapの誤縫合1人,食事開始2.1±0.3(2~3)日,術後在院日数7.7±3.2(4~22)日であった.術後遷延するdysphagiaを2人(9%)に認め,1人に内視鏡的拡張術を施行した.経過観察中に胃潰瘍を2人(9%)に認めたがPPI投与で治癒した.術後の食道炎の再発は6人(26%)であり,Los A 5人,Los C 1人であった.再発までの期間は術後平均31(10~76)か月であった.食道炎の再発とともに3例で食道裂孔ヘルニアの再発を認めたが,Los Cの1例は腹部食道がwrapごと縦隔内に逸脱しており,高度の亀背が存在した.再発例のうちLos A 5人はPPI半量から常用量投与で食道炎は治癒し,症状も消失した.Los C 1人はPPI倍量投与等で経過観察中である.【結語】PPI抵抗性erosive GERD症例の約75%をLARSで治癒させることが可能であった.また術後再発例の大半はPPI投与によって管理が可能であった.
索引用語