セッション情報 シンポジウム4

胃癌発症とヘリコバクター感染―菌体成分の役割と慢性炎症の役割

タイトル S4-1:

Helicobacter pyloriのOuter inflammatory protein A(OipA)による病原性発現機構の分子基盤

演者 城戸 康年(大分大学環境・予防医学)
共同演者 松尾 祐一(大分大学環境・予防医学), 山岡 吉生(大分大学環境・予防医学)
抄録 【目的】H. pylori感染による胃上皮細胞の慢性炎症発生機構において,多様な菌側の病原因子が関与していることが知られている.我々は,ピロリ菌起因性胃炎にて,外膜タンパク質(outer membrane protein:OMP)に属するOuter inflammatory protein A(OipA)が胃上皮細胞から炎症性サイトカイン(特にIL-8)産生を誘導することを報告してきた.OipAが存在する場合,他の高病原性因子も高い相関率で存在することが知られているが,OipAの直接的な機能やその相互作用分子は未知のままである.複数の病原因子が相乗的に作用しあって炎症を導くという仮説をたて,OipAによる病原性発現の分子基盤構築を目的とした.【方法】OipAの1次構造を用いて,バイオインフォマティクス解析により三次元構造のモデリングを行った.そのモデルに基づき大腸菌および無細胞タンパク質発現系を用いてrecombinant OipAを発現させ,生化学的に精製した.この精製OipAを用いて,その高次構造解析およびOipAの胃上皮細胞への影響を解析した.【成績】OipAの3次元構造として,8本の逆平行β鎖を有するβバレル構造モデルを構築できた.一般的に膜タンパク質の発現・精製は困難であると言われているが,我々は大腸菌発現系を用いてタンパク質発現誘導条件の検討を行い,高純度精製OipAを得ることに成功した.さらにOipAがFoxO1/3aなどのシグナル伝達に関与していた.【結論】OipAの精製は,H. pyloriのOMPファミリーとしては初めての報告であり,OipAが胃上皮細胞の慢性炎症発生機構において重要な役割を果たすことがわかった.本研究の成果に基づきOipAの相互作用分子が同定されると期待され,OipAによる炎症性サイトカイン産生機序の解明が進むと考えられる.
索引用語