セッション情報 シンポジウム4

胃癌発症とヘリコバクター感染―菌体成分の役割と慢性炎症の役割

タイトル S4-6:

胃炎―胃癌相関におけるSTAT3シグナル活性の意義について

演者 福井 広一(兵庫医科大学内科学上部消化管科)
共同演者 渡 二郎(兵庫医科大学内科学上部消化管科), 三輪 洋人(兵庫医科大学内科学上部消化管科)
抄録 【背景・目的】STAT3は様々な炎症性サイトカインの責任転写因子として中心的な役割を果たし,その過剰活性を示すマウスに胃炎とそれに伴う胃癌が自然発生することから,胃炎―胃癌相関で重要な役割を果すと考えられる.そこで本研究では,早期胃癌患者の非腫瘍性胃粘膜におけるSTAT3活性とその抑制分子であるSOCS3のmethylationの意義を明らかにする.【方法】非担癌患者およびESD治療を行う早期胃癌患者(n=53)の非腫瘍性胃粘膜よりDNAを抽出し,SOCS3 methylationの有無をMethylation specific PCR法で検討した.また,同組織におけるリン酸化STAT3と細胞増殖マーカーKi67の発現を免疫組織学的に評価し,SOCS3 methylationとの関連を解析した.ESD治療後,患者(n=34)はランダムに除菌群と非除菌群に分けられ,1年後に同様の検討が加えられた.【結果】SOCS3 methylationは非担癌患者10人中2人(20%)に認められH. pylori陽性胃炎を示したが,H. pylori陰性患者ではSOCS3 methylationを認めなかった.他方,SOCS3 methylationは53人中18人(34.0%)の早期胃癌患者の非腫瘍性胃粘膜に認められた.SOCS3 methylation陽性胃癌群は陰性胃癌群に較べ有意にpSTAT3 labeling indexが高値を示した(P<0.05).加えて,SOCS3 methylation陽性胃癌群は有意にKi67 labeling indexが高値を示した(P<0.05).除菌介入によりSOCS3 methylation陰性胃癌群ではpSTAT3とKi67のlabeling indexは共に低下したが,SOCS3 methylation陽性胃癌群では有意な変化は認めなかった.非除菌群ではSOCS3 methylationの有無に関係なくpSTAT3とKi67発現に変化を認めなかった.【結論】 STAT3の持続的なシグナル活性は胃粘膜の増殖能を促進し,胃癌発生に役割を果す可能性が示唆された.
索引用語