セッション情報 シンポジウム4

胃癌発症とヘリコバクター感染―菌体成分の役割と慢性炎症の役割

タイトル S4-8:

H. pylori感染により慢性胃炎粘膜に生じる遺伝子異常と胃癌

演者 清水 孝洋(京都大学消化器内科)
共同演者 丸澤 宏之(京都大学消化器内科), 千葉 勉(京都大学消化器内科)
抄録 【目的】H. pylori感染に伴う慢性胃炎を背景として胃癌が発生することはよく知られている.本研究では,H. pylori感染による慢性胃炎粘膜に潜在する遺伝子異常の全体像を明らかにすることで,胃癌の発生機序を明らかにすることを目的とする.【方法】1.胃癌5症例における癌部及び非癌部胃炎粘膜について,次世代シーケンサーを用いた全エクソン解析,2.H. pylori感染を伴った慢性胃炎34例の胃粘膜に潜在する癌抑制遺伝子p53の変異をdeep sequencing解析,3.Activation-induced cytidine deaminase(AID)を持続発現させたヒトp53ノックインマウスの胃粘膜におけるp53遺伝子変異のdeep sequencing解析,を行った.【結果】全エクソン解析からは,胃癌組織だけでなく,その発生母地である胃炎粘膜にもさまざまな遺伝子変異が潜在することが明らかになった.胃炎粘膜のdeep sequencingからは,34例中15例にp53の遺伝子変異が低頻度に存在することが分かった.遺伝子変異の特徴を見てみると,胃癌組織だけでなく胃炎粘膜においても,GpCpX配列におけるC:G>T:Aの変異パターンが最も多いことが分かった.これは,遺伝子編集酵素であるAIDの作用を示唆するものである.そこで,ヒトp53ノックインマウスにAIDを持続発現させたところ,50週齢のマウスの胃粘膜にはさまざまなp53変異が出現し,そのほとんどがGpCpX配列におけるC:G>T:Aの変異パターンを呈することが明らかとなった.【結論】H. pylori感染による慢性胃炎粘膜にはさまざまな遺伝子変異が潜在しており,その生成にはAIDが深く関与している可能性が示唆された.
索引用語