セッション情報 シンポジウム4

胃癌発症とヘリコバクター感染―菌体成分の役割と慢性炎症の役割

タイトル S4-9:

胃癌および十二指腸潰瘍発症におけるPSCA(prostate stem cell antigen)遺伝子多型の影響

演者 市川 仁美(浜松医科大学第一内科)
共同演者 杉本 光繁(浜松医科大学第一内科), 古田 隆久(浜松医科大学臨床研究管理センター)
抄録 【目的】H.pylori(HP)感染は胃癌(GC)と十二指腸潰瘍(DU)発症の重要な危険因子である.HP感染による発癌機序については不明な点が多々残されている一方で,DU症例は同じHP関連疾患にもかかわらずGC発症の危険性が低いことが知られている.両疾患の発症にはHPの菌側因子,宿主因子,環境因子などが影響を及ぼすが,両疾患の易罹患性を規定する因子は明らかではない.近年,宿主因子の中でPSCA遺伝子のrs2294008のCアレル保持者がDUの,Tアレル保持者がGC発症の高危険群である可能性が報告された.今回我々は,PSCA遺伝子多型の慢性炎症に関連したHP関連疾患易罹患性への影響を検討した.【方法】HP陰性健常ボランティア261例と,当院を受診したHP陽性488例[GC:219名,DU:61名,慢性胃炎:124名,胃潰瘍(GU):84名]を対象に,PSCA遺伝子多型(rs2294008 C/T)をRFLP-PCR法にて測定し,疾患特異性を検討した.【結果】DU症例のCC型は36.1%(22/61)であり,陰性健常者(19.2%,50/261),GC(13.2%,29/219),GU(19.0%,16/84),慢性胃炎(10.5%,13/124)症例と比較して有意にCC型が多くみられた(P=0.001).Tアレル保持者(CT/TT型)は,DU症例と比較して,GC(3.70,1.92-7.10,P<0.001),GU(2.40,1.13-5.10,P=0.023),慢性胃炎(4.82,2.22-10.47,P<0.001)とオッズ比は有意に高く,疾患特異性を認めた.【結語】DU症例に比較して,PSCA遺伝子のTアレル保持者(CT/TT型)はGC・GU・慢性胃炎の発症リスクを増すことから,PSCA遺伝子がDUおよびGCの発症に関与し,両疾患の易罹患性の違いに関連している可能性が考えられた.
索引用語