セッション情報 シンポジウム4

胃癌発症とヘリコバクター感染―菌体成分の役割と慢性炎症の役割

タイトル S4-12:

Helicobacter pylori除菌後状態で有用な胃がんリスクマーカーの同定

演者 南條 宗八(富山大学内科学第三講座)
共同演者 寺尾 秀一(加古川西市民病院消化器内科), 杉山 敏郎(富山大学内科学第三講座)
抄録 【目的】Helicobacter pyloriH. pylori)感染は胃粘膜にエピゲノム異常を誘発し,特定のCpGアイランド(CGI)のメチル化レベルが胃がんリスクと関連していることが明らかにされてきた.H. pylori除菌により胃がんリスクは減少するが,非感染者レベルまでは戻らず残存し,除菌後胃がん発生の母地となる.この高危険群の個人レベルでの発がんリスクを評価できる候補分子マーカーを同定することは極めて重要である.本研究ではその同定を目的とした.【方法】胃がん患者27人と健常者34人から内視鏡的胃粘膜生検により検体を採取した.対象者は全員,H. pylori試験陰性で胃粘膜萎縮があり,除菌後胃粘膜ではないが,胃がん患者非がん部胃粘膜は発がんリスクの高い胃粘膜と推定して本研究結果を考察した.マーカー探索のためMeDIP-CGIマイクロアレイを行った.メチル化レベルはメチル化特異的PCR法で解析した.【成績】健常者胃粘膜より胃がん患者非がん部粘膜で高メチル化状態の15個のCGIを単離した.15個のCGIのうち7個で,健常者胃粘膜より胃がん患者非がん部粘膜でメチル化レベルが高値であった.さらに7個のCGI全てで,別の胃がん患者21人と健常者14人の検証群でも,同様の結果が得られた.また,検証群で算出したROC曲線の曲線下面積やオッズ比は,それぞれ0.78-0.84と12.7-36.0で,現在利用可能なリスクマーカーの0.60-0.65と5.0-5.7を上回った.【結論】今回,H. pylori感染が胃粘膜に誘発するエピゲノム異常をゲノムワイドに解析し,除菌後近似状態で発がん高危険群の同定に有用と推定される7個の新規胃がんリスクマーカーを単離,同定した.今回同定した新規マーカーを利用することにより,H. pylori除菌後患者の胃がんリスクを個人レベルで評価できると考えられる.
索引用語