セッション情報 シンポジウム4

胃癌発症とヘリコバクター感染―菌体成分の役割と慢性炎症の役割

タイトル S4-13:

H. pylori陽性胃炎患者におけるCOX-2のSNPを用いた除菌後ハイリスク群の絞り込み

演者 小高 康裕(日本医科大学消化器内科学)
共同演者 二神 生爾(日本医科大学消化器内科学), 坂本 長逸(日本医科大学消化器内科学)
抄録 (目的・背景)慢性胃炎に対する除菌治療が保険適応となり,急速にH.pylori胃炎に対する除菌症例が増加している.しかしながら,除菌後の内視鏡フォローをどの程度の期間で行うかなど,リスク管理は明確でない.一方で,我々は以前よりH. pylori感染により誘導されるCOX-2の重要性について報告してきた(Gut, 2000, 46, 782;Gut, 2003, 52, 1257;Digestion, 2012, 81, 193).最近,胃癌組織においてCOX-2のSNP測定の重要性が報告されている.今回我々は,IL-1βに加え,COX-2のSNPをH.pylori陽性胃炎患者を対象に解析するとともに,実際の胃炎の程度を組織学的に比較検討することで,H.pylori胃炎患者の除菌後のハイリスク群の絞り込みに利用できないか検討した.(方法)H.pylori陽性患者242名を対象としてCOX-2(1195G/A:rs689466および1290A/G),IL-1β(rs16944),TNF-α(rs1800629)のSNPを設計し,内視鏡下生検ブロックまたは血液よりDNAを抽出しSNPの測定を行なった.内視鏡下生検より胃前庭部,胃体部小弯側・大弯側からの生検標本をactivity・inflammation・IM(Intestinal Metaplasia)・atrophyの程度を0-3でスコア化した.(結果)IL-1β(n=242)のTTでは,activity:1.72±0.60,inflammation:2.04±0.32,IM:0.43±0.77,atrophy:1.15±0.64.であった.一方,CT/CC型では,activity:1.61±0.78,inflammation:2.09±0.47,IM:0.44±0.72,atrophy:0.94±0.90.であった.COX-2(rs689466)(n=242)のTTでは,activity:1.66±0.74,inflammation:2.32±0.60,IM:0.52±0.62,atrophy:1.06±0.94.であった.一方,CT/CC型では,activity:1.52±0.71,inflammation:2.02±0.39,IM:0.54±0.74,atrophy:0.85±0.85.であった.(結語)COX-2(rs689466)TTでは,IMのスコアが高く,H.pylori胃炎患者の除菌後のリスク管理に有用な可能性が示唆された.
索引用語