セッション情報 シンポジウム4

胃癌発症とヘリコバクター感染―菌体成分の役割と慢性炎症の役割

タイトル S4-14:

OLGA systemを用いたH. pylori除菌後発見胃癌と慢性炎症の関連

演者 兒玉 雅明(大分大学消化器内科)
共同演者 沖本 忠義(大分大学消化器内科), 村上 和成(大分大学消化器内科)
抄録 【目的】H. pylori除菌後発見胃癌の高危険因子として組織学的胃炎分類を用いたOperative Link for Gastritis Assessment(OLGA)systemによる予測の検討を行った.【方法】除菌治療成功した2355例(男1482例,女821例)中,非胃癌例と除菌後胃癌例にて除菌時年齢,疾患,内視鏡萎縮度,updated Sydney system,OLGA systemを用いた組織学的所見を比較,また性年齢を一致させた非胃癌群と胃癌群にて多変量解析を用い胃癌危険因子を検討した.【結果】除菌成功2355例中除菌後胃癌症例は33例(男25例,女8例)であった.3年以上経過の非胃癌群473例と噴門部癌を除いた胃癌群21例では胃癌群で有意に男性比,除菌時高齢,内視鏡的萎縮度が胃癌群で有意に高値であった(P<0.001).組織にて非胃癌群と胃癌群では前庭部で炎症2.3±0.6 vs. 2.5±0.8(P=0.042),萎縮1.4±0.8 vs. 2.0±0.9(P<0.001),体部にて炎症2.0±0.6 vs. 2.3±0.7(P=0.019),IM 0.1±0.4 vs. 0.2±0.5(P=0.049)と胃癌群にて有意な高値を示した.OLGA systemではgrade 0-II/III,IV比が非胃癌群で412/61に対し胃癌群で13/8と有意に高いstageが見られた(P=0.001).性年齢を一致した非癌群66例と胃癌群21例では多変量解析において内視鏡的萎縮がオッズ比(OR)2.48(95%CI 1.47-4.19),組織学的前庭部萎縮OR 2.86(95%CI 1.25-6.55),体部炎症OR 2.70(95%CI 1.01-7.27),体部IM OR 6.26(95%CI 1.28-30.60)であった.OLGA-staging systemではgrade 0-II/III,IV比が非胃癌群で55/11,胃癌群で13/8と胃癌群で有意にIII,IVが高率であった(P=0.038).【結論】除菌後発見胃癌の要因として除菌時年齢,内視鏡的萎縮度,前庭部大弯での組織学的炎症,萎縮,体部大弯での炎症,IM,OLGA-staging systemがあげられた.多変量解析では体部IMが高いORを示し,これらが除菌後胃癌予測因子となる可能性が示唆された.
索引用語