セッション情報 シンポジウム5

IBDの治療;Real practiceにおける選択とその根拠

タイトル S5-3:

生物学的製剤二次無効と対策(治療薬物モニタリングを含めて)

演者 安藤 朗(滋賀医科大学大学院感染応答・免疫調節部門)
共同演者 藤本 剛英(滋賀医科大学大学院感染応答・免疫調節部門), 高橋 憲一郎(滋賀医科大学大学院感染応答・免疫調節部門)
抄録 2種類の抗TNF-α抗体の効果を最大限にひきだす投与法を考える必要がある.Infliximab(IFX)トラフ値とanti-infliximab antibodies(ATI)濃度からクローン病の病態を解析した.ATIのカットオフ値を10.2μg/ml,IFXトラフ値のカットオフ値を1μg/mlに設定すると,ATI陽性,トラフ値カットオフ以下の患者の多くが二次無効となりIFXの効果減弱例と判断された.ATI力価が高値を示す患者に比べ,ATIカットオフ値近傍の患者が多く認められた.ATI陽性だがトラフ値も陽性でIFXの効果が持続している患者は,血中のATIがIFXに対する中和活性を持っていないと考えられる.ATI陽性,トラフ値陽性で二次無効となっている患者では病態形成にTNF-αの関与が低いと考えられる.Adalimumab(ADA,anti-adalimumab antibodies(AAA)について,CRP値0.3mg/dlを指標にADAトラフ値5.9μg/ml,AAA1.1μ/mlにカットオフ値を設定した.AAAの数値が高く,ADAトラフ値の低い患者の多くがCRP陽性を示している.IFXとの違いは,ADAトラフ値は抗体が存在しても数μg/mlを示すこと,AAAの測定値がATIの測定値と比較して非常に低いことが明らかとなった.IFX投与歴の有無でAAA濃度を比較すると,AAA1.1μ/mlをカットオフとして抗体陽性率を比べると,バイオナイーブ症例12.5%,IFX投与歴のある症例54.1%という結果であった.このことは,IFXの投与歴のある患者特にIFXに二次無効となった患者では容易にAAAが陽性となる可能性を示している.IFX投与歴のある患者ではADAの有効率が低い要因と考えられた.IFX二次無効例ではIFXトラフ値とATIを測定し,ATI高値の患者は容易にAAA陽性になりやすいことからADAへの変更よりもIFX増量が適応になると考えられる.ATI低値の患者ではADAへの変更もしくはIFX増量.基本的な考え方として,バイオナーブ症例はまずADAで治療を開始して一次無効,効果減弱が認められるようならIFXに変更するようなストラテジーが基本のように考えられた.
索引用語