セッション情報 シンポジウム5

IBDの治療;Real practiceにおける選択とその根拠

タイトル S5-5:

クローン病治療における外科の役割

演者 東 大二郎(福岡大学筑紫病院外科)
共同演者 二見 喜太郎(福岡大学筑紫病院外科), 前川 隆文(福岡大学筑紫病院外科)
抄録 【目的】クローン病(CD)の内科治療は生物学的製剤の登場により飛躍的に進歩したが,根治的治療が確立していない現在,治療体系のなかで外科治療は未だ欠かせない.また長期症例増加とともに癌合併症例が増えており,その診断,治療においても外科的アプローチは必須である.CD治療における外科の役割りとして再手術予防と癌合併症例について検討を行った.【対象・方法】術前後経過については内科治療の進歩に応じた外科治療の変化を検討するために,1999年までの初回手術例128例と2000年以後の初回手術例226例に分けて検討した.癌合併については2012年12月までの癌合併症例15例を対象とした.【結果】術前治療を比較すると1999年以前,栄養療法,サラゾピリン製剤以外の治療としてはステロイド(24.2%),内視鏡的拡張術(5.5%)であったのに対し,2000年以後ではステロイド(34.5%),内視鏡的拡張術(11.5%)の頻度が増え,生物学的製剤(11.5%),免疫調節剤(15.5%),血球除去療法(0.4%)と多様になっていた.発症から初回手術までの期間は1999年までは71.0ヶ月,2000年以後では109.9ヶ月と38.9ヶ月の期間延長を認めた.再手術率を比較すると1999年までは5年33.9%,10年57.2%,2000年以後では5年18.3%,10年38.6%で,2000年以後で有意差に低下していた(p<0.05).生物学的製剤は2000年以後37.2%に使用されていたが,生物学的製剤使用群(84例)と非使用群(142例)の再手術率の比較では,5年23.1%対15.6%,10年37.1%対43.5%と有意差はなかった(p>0.05).癌合併は小腸癌2例,大腸癌13例であった.小腸癌の2例は前回手術時の吻合部近傍に発生しており1例は多発癌であった.大腸癌は13例中11例(84.6%)が肛門管に発生していた.【結語】内科治療の進歩により外科治療までの期間を延長,再手術率低下がみられた.生物学的製剤は術後約40%の症例に使用されていたが,再手術率の有意な低下は認めなかった.癌合併症例は肛門管に多く発生しており同部位の精査が重要で,CD大腸癌スクリーニングの第一歩となると考えられる.
索引用語