セッション情報 |
シンポジウム5
IBDの治療;Real practiceにおける選択とその根拠
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タイトル |
S5-7:難治性潰瘍性大腸炎に対する経口tacrolimusとinfliximab投与時の寛解導入予測式および決定木の相互比較
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演者 |
中川 倫夫(千葉大学医学部附属病院消化器内科) |
共同演者 |
勝野 達郎(千葉大学医学部附属病院消化器内科), 横須賀 收(千葉大学医学部附属病院消化器内科) |
抄録 |
【目的】難治性潰瘍性大腸炎(UC)に対する経口tacrolimus(TAC)とinfliximab(IFX)投与時の早期臨床的判断のため寛解導入予測式と決定木を策定し相互比較を行った.【方法】対象は当院にてTACあるいはIFXを導入された難治性UC症例のうち,最低2週間まで初期治療継続,3ヶ月後まで経過観察可能であった症例.3ヶ月後のLichtiger score(以下LS)≧5,あるいは3ヶ月後までに手術・経口ステロイド・新たなcalcineurin阻害薬・抗TNFα抗体のいずれかが施行された症例を「非寛解」と定義した.投与開始2週間までの臨床的背景・臨床的重症度・血液データの変化と,3ヶ月後の寛解導入率との相関について多重logistic回帰分析と決定木分析を行った.【成績】TAC導入群(49名)・IFX導入群(45名)の群間比較では,男女比,投与開始時年齢,罹病期間(順に5.2年・5.8年),投与開始時(LS=9.7・9.0)および2週間後(LS=6.0・6.9)の臨床的活動性,3ヶ月後の寛解導入率(63%・59%)に有意差は認められず.多変量解析の結果,両薬剤共に投与開始2週間めのLS(LS-2W)≧7が3ヶ月後の有意な「非寛解」予測因子として抽出された(順にP=0.002・P<0.0001).さらに,下位の予測因子を解析するため決定木分析を行なった.その結果,TAC導入群ではLS-2W≧7かつ2週間めの血小板数(PLT-2W)≧32.6(万/μL)で,88%が実際に「非寛解」となり,IFX導入群ではLS-2W≧7かつPLT-2W<32.5(万/μL)で90%が実際に「非寛解」となった.決定木における血小板数の位置づけがTACとIFXでは正反対であった.TACとIFX間のswitchingは予後予測因子として抽出されなかった.【結論】投与開始2週間後の臨床指標から,3ヶ月後に「非寛解」となる症例が有意に高率に予測できた.予測情報を患者・スタッフと共有することは,実臨床における早期臨床的判断のための有益な手段の一つになると思われる. |
索引用語 |
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