セッション情報 シンポジウム5

IBDの治療;Real practiceにおける選択とその根拠

タイトル S5-9:

潰瘍性大腸炎合併low grade dysplasiaに対する治療選択

演者 小澤 毅士(東京大学腫瘍外科)
共同演者 石原 聡一郎(東京大学腫瘍外科), 渡邉 聡明(東京大学腫瘍外科)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎(UC)は患者数の増加,罹患期間の長期化に伴いUC合併dysplasiaの増加が問題となっている.Dysplasiaの取り扱いは,一般的にhigh grade dysplasia(HGD)を認めた場合は手術が勧められているが,low grade dysplasia(LGD)の扱いは一定していない.当科における内視鏡的生検でLGDと診断された症例を検討し,LGDの取り扱いについて考察する.【方法】1985年~2013年に当科で内視鏡的生検でLGDと診断された23例(LGD群)の継時的変化を後ろ向きに検討すると共に,HGDもしくは癌と診断された30例(HGD/Ca群)と,臨床病理学的因子を後ろ向きに比較検討した.【結果】LGD群23症例のうち,8症例に大腸全摘術が施行され,2症例に内視鏡的切除が,13症例は経過観察された.大腸全摘が施行された症例の最終診断は4症例が癌で,4症例がLGDであり,残りの15症例の平均観察期間37カ月における最終診断は5症例がLGD,10症例が腺腫でありHGD以上への進展は認めなかった.また,経過観察された1症例で他部位に癌を合併した.内視鏡的生検にて繰り返しLGDの診断を得た15症例の最終診断は,4症例が癌,7症例がLGD,4症例が腺腫であり,癌4症例は全例で複数回LGDの診断を得ていた.LGD群はHGD/Ca群と比較して,罹病期間や罹患範囲,病変部位などに有意差を認めなかったが,発症年齢が有意に高く,(平均39歳,32歳,p=0.021),また5年生存率が有意に良好であった(100%,83%,p=0.0258).【結語】内視鏡的生検でLGDと診断される症例は予後が良好であるが,注意深い内視鏡的経過観察が必要である.内視鏡的生検で繰り返しLGDの診断をされた症例では27%の症例で癌の合併を認め,特に注意が必要である.
索引用語