セッション情報 シンポジウム5

IBDの治療;Real practiceにおける選択とその根拠

タイトル S5-10:

IBDの手術と術後治療

演者 小金井 一隆(横浜市立市民病院外科)
共同演者 辰巳 健志(横浜市立市民病院外科), 杉田 昭(横浜市立市民病院外科)
抄録 【潰瘍性大腸炎】手術例数は,当科の過去6年では年間70例以上あり,減少していない.標準術式は大腸全摘,回腸嚢肛門あるいは肛門管吻合術である.当科では後者を標準とし,1992年以降の同術式施行例数は970例を超え,近年は70%以上で一期手術を施行している.colitic cancerまたはdysplasiaが過去4年は全手術例の15%以上と増加し,昨年は25%であり,これらには,大腸全摘,直腸粘膜抜去,回腸嚢肛門吻合術を標準とし,2期分割で行っている.サーベーランスが普及し,dysplasiaと早期癌の症例が65%と多いものの,6%は遠隔転移や腹膜播種を伴う進行癌症例で,予後が不良であった.70歳以上の手術例も増加し50例となった.これらでは,術後在院死亡率が12%と高く,適切な術前治療や手術のタイミングが重要である.術後には回腸嚢炎や腸閉塞などで治療を要する場合があるものの,pouch failureとなる症例は少なく,QOLは比較的良好である.【クローン病】手術例数は当科の過去6年間では年間140例以上あり,増加し続けている.抗TNFα抗体製剤の登場後も手術適応となる病変は変わらず,同剤使用後に手術した150例も同様で,狭窄が60%と最も多かった.腸管病変に対しては病変部の小範囲切除,狭窄形成術が基本術式である.人工肛門造設例や直腸肛門病変に対する直腸切断術例が増加し,前者は265例,後者は110例となった.人工肛門造設例ではその口側の狭窄や瘻孔形成などの再発が約30%の症例にあり,人工肛門関連合併症による人工肛門再造設施行率は5年累積で15%であった.後者では会陰創の治癒が問題で,術後6か月以上治癒しない症例が38%あった.intestinal failure症例や直腸肛門管癌合併例が増加しており,後者は早期発見が困難で,予後が不良である.術後の大きな問題である再燃,再手術の確立された予防法はなく,フォローアップ法を含め,今後の検討が必要である.【まとめ】IBDに対する内科治療のモダリティーは増えたものの,手術を要する症例がある.手術のタイミングは術後経過を左右するため,遅れがないように手術を行うべきである.
索引用語