セッション情報 シンポジウム6

難治性C型肝炎治療の展望

タイトル S6-5:

NKT細胞のNKG2D発現はC型慢性肝炎のGenotype関連PEG-IFN/RBV治療効果を予測する

演者 楮 柏松(慶應義塾大学病院消化器内科)
共同演者 海老沼 浩利(慶應義塾大学病院消化器内科), 金井 隆典(慶應義塾大学病院消化器内科)
抄録 【目的】PEG-interferon(PEG-IFN)/Ribavirin(RBV)を用いたC型慢性肝炎(CHC)に対する治療では,Genotype1はGenotype 2よりsustained viral response(SVR)率が不良であることは周知の事実であるが,この理由は未だに不明である.今回我々はNKG2Dに着目し,ウイルス駆除に関わるNK細胞,NKT細胞,CD8 T細胞を中心に,Genotype別で分析検討し,SVRに寄与するマーカーを探索した.【方法】Informed consentを得られた当科通院中のCHC患者(Genotype 1:53例,2:14例)の末梢血単球細胞(PBMC)を単離し,フローサイトメトリーにてPEG-IFN/RBV治療前のNKG2D発現を分析した.また,検証のため2種のHCV培養系統,JFH1(Genotype 2a),及びTNS2J1(構造領域1b,非構造領域2aのキメラウイルス)を用いて共培養実験を行った.【結果】Genotype1のCHC患者の末梢血CD56+CD3+NKT細胞数はGenotype2と比較し変化は認めなかったが,NKG2D発現率は,有意に低値であった(71.4±1.6% vs 87.8±3.2%,p<0.0001).また,治療前NKT細胞のNKG2D発現率は,治療4週目のHCV-RNA低下率に有意かつ高度に相関し(相関係数0.78,p<0.0001),最終的にSVR率と相関した.このNKT細胞のNKG2D発現率はGenotype1においてIL28B SNPs及びISDR変異数との関連を認めなかったが,core aa70及びaa91の変異と有意に相関した.さらに,このNKT細胞のNKG2D発現率はNKT細胞のIFN-γ産生能に高度相関した.JFH1(2a),TNS2J1(1b/2a)を用いた免疫細胞との共培養では,NKT細胞のNKG2D発現率はTNS2J1と共培養で低下したが,JFH1との共培養は低下しなかった.これらの現象はNK細胞では見られなかった.【結論】HCV Genotype 1の持続感染ではGenotype 2に比し,NKT細胞(NK細胞ではなく)のNKG2D発現率を低下させる.NKT細胞のNKG2D発現率の低下はPEG-IFN/RBV治療不応に繋がった.NKT細胞のNKG2D発現率は,今後抗ウイルス薬時代におけるIFN併用治療の意義を検討させるターゲットに成り得ると考えられた.
索引用語