セッション情報 シンポジウム6

難治性C型肝炎治療の展望

タイトル S6-10:

薬剤耐性を考慮したプロテアーゼ阻害剤併用療法

演者 芥田 憲夫(虎の門病院肝臓内科)
共同演者 鈴木 文孝(虎の門病院肝臓内科), 熊田 博光(虎の門病院肝臓内科)
抄録 【目的】Telaprevir(TVR),Simeprevir(SMV)を用いたプロテアーゼ阻害剤(PI)併用療法は高い治癒率が期待されるが,難治例では薬剤耐性の問題が存在する.今回は薬剤耐性の現状とUltra-deep sequence(UDS)による耐性ウイルス測定の有用性を検討する.【方法】[検討1]当院でPEG-IFN/RBV/TVR併用を導入されたHCV-1bの342例中SVR判定可能な273例から治療効果予測因子を検討.[検討2]Direct sequenceで治療前,RNA再上昇時のPI耐性の経時変化を検討.前治療歴と治療前PI耐性から見た治療効果を検討.[検討3]TVR臨床治験で治癒しなかった17例は,UDSで治療前,RNA再上昇時の耐性変異の経時変化を検討.Ion PGMTM(Life Technologies)を用い,HCV Plasmid DNAの変異出現率を基準に0.2%以上を有意な変異とした.【結果】[検討1]SVR率77%(初回治療87%,前治療再燃84%,前治療無効52%).多変量解析でSVR予測因子は前治療歴(無効例以外)・IL28B rs8099917(TT)が有力な因子として抽出され,特に難治な前治療無効例においてはCore aa70(Wild)・血小板数(15万/mm3以上)・治療法(市販後)が有力な因子として抽出された.[検討2]TVR耐性(V36,T54,R155,A156,V170)は治療前4%からRNA再上昇時17%に増加,SMV耐性(Q80,R155,D168)は30%から5%に減少.TVR/SMV耐性(R155)は0.4%から0.4%と変化せず.前治療無効例で治療前TVR耐性を持たない症例のSVRが55%に対して,TVR耐性変異を有する4例は何れも治癒せず.この4例は何れも治療前TVR耐性(T54S)と同時にSMV耐性(Q80L)も有する症例であった.[検討3]治療前TVR耐性が検出されなかった11例は何れもRNA再上昇時に新規TVR耐性が増加.治療前TVR耐性変異が検出された6例中5例は新規TVR耐性が増加し,治療前と同じ耐性変異が増加したのは1例であった.【結論】前治療無効例でPI耐性変異を有する症例は次世代DAAs併用療法も含めて注意を要する.UDSで治療前にPI耐性変異出現を予測することは現時点では困難であり,その臨床的有用性は更なる検討を要する.
索引用語