セッション情報 シンポジウム6

難治性C型肝炎治療の展望

タイトル S6-11:

NS3・NS5A阻害剤それぞれの耐性変異とIFN治療反応性に基づく難治性C型肝炎の治療戦略

演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院消化器科)
共同演者 鈴木 祥子(武蔵野赤十字病院消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院消化器科)
抄録 【目的】新規DAA(NS3・NS5A阻害剤)の臨床導入を視野に入れ,DAA耐性変異とIFN反応性による治療効果予測について検討した.【方法】Peg-IFN・RBV(PR)併用療法を施行したC型慢性肝炎を対象とし,治療前のNS3・NS5A変異と治療反応性(VR:12週HCV減衰2Log以上)との関連を検討した.4週間のLead-in(LI)後にTelaprevir(TVR)3剤併用を施行した47例を対象とし,治療前のNS3変異,LIのHCV減衰とSVRとの関連を検討した.【成績】PR2剤治療前のNS5A変異はL31:4%,Q54:54%,Y93:31%,特にNS3・NS5A阻害経口2剤併用に高度抵抗性を示すL31-Y93多重変異は4%存在した.NS3変異はV36-T54多重変異:2%,Q80:6%であった.NS3とNS5Aの多重変異は4%であった.PR2剤併用に対する反応性は,IL28B TTかつY93変異陰性例ではVR:100%,IL28B TTかつY93変異陽性例ではVR:86%であった.IL28B TGかつY93耐性変異のない症例ではVR:50%,IL28B TGかつY93耐性変異を有する1例はNVRであった.NS5AのL31-Y93多重変異例,NS3・NS5Aの多重変異例はいずれもIL28B TTでありVRが得られた.TVR併用療法施行例では,LIのHCV減衰(Log)が<1.0/1.0-1.9/≧2.0のSVR率は33%/50%/100%でありIFN反応性はTVR併用治療効果と密接に関連した.NS3領域のV36-T54多重変異例はLIでHCVが2.3 Log減衰し最終的にSVRとなった.【結論】NS3・NS5A阻害経口2剤併用に抵抗性を呈するY93変異は31%,高度抵抗性が予想される多重変異は4%存在する.NS3・NS5A変異陽性例でもIL28B TTであればPR2剤で80%以上のVRが得られることからPR・NS3阻害3剤併用で高率にSVRが期待できる.NS3・NS5A変異陰性例ではNS3・NS5A阻害経口2剤併用までの治療待機も可能だが,IL28B TTであればPR・NS3阻害3剤併用でもSVRが期待できる.最難治のNS3・NS5A変異陽性かつIL28B TG・GG例の頻度は4%である.新規DAAで全体のSVR率は向上するが,個々の症例に対する治療戦略には,IFNに対する反応性とDAA耐性変異の両面からの検討が重要である.
索引用語