セッション情報 シンポジウム6

難治性C型肝炎治療の展望

タイトル S6-12:

C型慢性肝炎患者におけるDAA耐性株の検討―DAA併用療法を見据えて―

演者 今村 道雄(広島大学消化器・代謝内科)
共同演者 川上 由育(広島大学消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学消化器・代謝内科)
抄録 【目的】IFN難治性のHCV患者に対する治療は,IFN非使用DAA併用療法に頼らざるを得ないが,プロテアーゼ阻害剤(PI)およびNS5A阻害剤耐性株が問題となる.今回HCV患者およびHCV感染マウスを用いて耐性株を検討した.
【方法】ASV+DCV併用療法の臨床試験10例を含む1b型HCV患者19例のHCV NS3(aa155,156,168)およびNS5A(aa31,93)のアミノ酸変異を次世代シーケンサーによるdeep sequenceにて解析した(0.1%以上を有意とした).またヒト肝細胞キメラマウスを用いて野生型またはDAA耐性型HCVに対するPI+NS5A阻害剤併用療法の効果および耐性株発現を検討した.
【成績】NS5A阻害剤耐性株L31Vを5例(26%),Y93Hを14例(74%)に検出し,うち3例(16%)はY93Hがmajorクローンであった.PI耐性株がmajorクローンとなっている症例は存在しなかった.ASV+DCV併用療法により,耐性株がmajorクローンでない7例では全例SVRが得られたが,Y93Hがmajorクローンとなっている3例では,1例はSVR,1例は二重耐性株(D168A+L31M/Y93H)により再燃,1例は二重耐性株(D168V+L31M/Y93H)によりviral breakthroughを生じた.野生型HCV感染マウスでは,NS5A阻害剤+テラプレビルによりウイルスは排除されたが,テラプレビル耐性型HCV感染マウスでは排除されなかった.NS5A阻害剤耐性型HCV感染マウスではNS5A阻害剤+テラプレビルにより二重耐性株(V36A+L31V/Y93H)が出現しviral breakthroughが生じた.また二重耐性株(V36A+L31V/Y93H)感染マウスでは併用療法による血中ウイルス量の低下はわずかであり,さらにポリメラーゼ阻害剤投与により三重耐性変異(V36A+L31V/Y93H+P495S)が出現した.
【結論】NS5A Y93Hがmajorクローンの症例では,PI+NS5A阻害剤併用療法により二重耐性株が出現し易い.また二重耐性株を有する症例ではPI+NS5A阻害剤併用療法の効果は期待できない.IFN難治性患者にPI/PEG-IFN/RBVの導入を考慮する際,NS5A阻害剤耐性株の有無も判断材料とし,将来的治療に備え二重耐性株出現を予防する必要があると思われる.
索引用語