セッション情報 |
シンポジウム7
早期肝臓癌画像診断の到達点と治療選択
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タイトル |
S7-1[基]:早期肝細胞癌の血流・機能診断:病理学的・分子病理学的背景を中心に
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演者 |
小林 聡(金沢大学経血管診療学) |
共同演者 |
北尾 梓(金沢大学経血管診療学), 松井 修(金沢大学経血管診療学) |
抄録 |
異型結節のなかに少しでも間質浸潤を示す部分があれば病理学的には早期肝細胞癌(早期肝癌)と定義される.このような結節ではピンポイントの画像診断は理論的に不可能である.こうした点から,早期肝癌の画像診断には肝癌多段階発癌にともなう画像所見の多段階的変化を理解することが必須である.異型結節からの多段階発癌過程の進行に伴い結節内門脈域・門脈血流は段階的に減少していくが,肝動脈血流は異型結節から早期肝癌の段階で正常肝動脈の減少に伴い一時周辺肝に比べ減少し,その後,結節内のunpaired arteryが増加していくため急激に増加する.組織学的検討では発癌過程で次第に結節内の類洞の毛細血管化やunpaired arteryが門脈域周辺から次第に拡大していくこと,この過程にはVEGFやそのreceptorであるFlk-1,HIF-1aなどが関与していることなどが判明している.早期肝癌ではこうした変化が軽度にみられ,結節内動脈血流は周辺肝とほぼ同等で門脈血流は存在するものの周辺に比べCTAPでは軽度低下するのが典型像である.結節からの流出血流も多段階的に変化するが,早期肝癌では主に肝静脈に還流し早期肝癌では腫瘍周辺のコロナ濃染は見られない.Gd-EOB-DTPA造影MRI(EOB-MRI)肝細胞相の肝癌の信号強度は肝癌細胞膜トランスポーターOATP1B3(OATP8)の発現と強い相関がある.一方,過去に切除された結節での免疫組織化学的検討では,多段階発癌における結節の悪性度の上昇に伴ってOATP1B3の発現が多段階的に有意により高度に減少し,早期肝癌の85%前後でその発現が周辺肝に比べすでに発現低下がみられている.OATP1B3発現低下は極めて鋭敏な肝癌発癌初期の分子マーカーといえる.実際の臨床でも多段階発癌にともない肝細胞相での信号強度は低下し,早期肝癌は動脈優位相で乏血性で肝細胞相で低信号を示す結節として極めて高い精度(90%以上)で描出されることが報告されている. |
索引用語 |
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