セッション情報 シンポジウム7

早期肝臓癌画像診断の到達点と治療選択

タイトル S7-2[基]:

早期肝細胞癌治療の考え方

演者 高山 忠利(日本大学消化器外科)
共同演者 緑川 泰(日本大学消化器外科)
抄録 早期肝細胞癌(以下,肝癌)は腫瘍内に遺残する門脈域への間質浸潤を有し,肉眼的には小結節境界不明瞭型を呈し,その多くは画像上で乏血性腫瘤として描出される.ハイリスク群患者に対するスクリーニングの普及に加えEOB-MRIや造影超音波など診断技術の進歩により早期肝癌が診断される頻度も増加し,早期診断・治療による予後の改善が報告されている.その一方で早期肝癌治療による生命予後の延長はリードタイムバイアスを含む可能性が以前より示唆されているが一定の見解は得られていない.径2cm以下の早期肝癌46例,進行肝癌202例,またコントロールとして無治療で死亡まで経過観察された早期肝癌12例,進行肝癌16例を解析の対象とし,早期肝癌治療の妥当性について検討した.早期肝癌及び進行肝癌切除後の無再発生存期間の中央値はそれぞれ4.1年(95%CI,3.5-5.8)対2.0年(95%CI,1.8-2.2;P=0.001),全生存期間の中央値はそれぞれ8.8年(95%CI,7.2-11.2)対6.8年(95%CI,6.2-8.3;P=0.025)となり,いずれも早期肝癌で有意に延長していた.リードタイムと治療効果を合計した切除による見かけ上の生存期間の延長はゴンペルツ関数で補正した生存曲線により囲まれた面積に相当し,34.7か月(95%CI,22.1-46.5)であった.一方で早期肝癌および進行肝癌の切除による治療効果はそれぞれの自然経過観察症例と比較して74.7ヶ月(95%CI,51.9-97.4),73.4ヶ月(57.9-88.9)であり,2群の治療効果は74.7-73.4=1.3ヶ月(95%CI,-22.1-24.7),リードタイムは34.7-1.3=33.4ヶ月(95%CI,18.9-47.8)と計算され,生存期間延長に対する治療効果の占める割合は小さかった.以上の解析により早期肝癌に対する治療効果は限定的(marginal)である.[Midorikawa Y, Takayama T, Tanaka M, et al. Marginal survival benefit in the treatment of early hepatocellular carcinoma. J Hepatol. 2013:58;306-311.]
索引用語