セッション情報 シンポジウム7

早期肝臓癌画像診断の到達点と治療選択

タイトル S7-10:

肝がん既往のない慢性肝疾患患者におけるEOB-MRI肝細胞相で低信号となる乏血性結節の予後と多血化リスク

演者 大岡 美彦(千葉大学医学部附属病院消化器内科)
共同演者 千葉 哲博(千葉大学医学部附属病院消化器内科), 横須賀 收(千葉大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 【背景】EOB-MRIの登場により早期肝細胞癌の検出が可能となる一方,dysplastic noduleとの鑑別が問題となっている.生検診断は一つの答えだが,sampling errorや侵襲性があり,すべての結節に対し行うことは現実的ではない.【目的】EOB-MRI肝細胞相で低信号となる乏血性結節の予後と多血化リスクを肝がん既往のない慢性肝疾患患者において検討する.【方法】2008年3月から2012年5月までに当院にてEOB-MRIを施行された患者1692名から肝がん既往のない慢性肝疾患患者414名を抽出した.そのうち,最初のEOB-MRIで多血性肝細胞癌または他の悪性疾患を検出されたそれぞれ106名,11名を除いた297名を対象とした.同症例の最初のEOB-MRIを2名の読影医によって読影し,動脈相で造影されず,肝細胞相で低信号となる結節の有無,サイズを判定した.EOB-MRIによる経過観察期間が1年未満の72症例は解析から除外した.検出された乏血性結節の多血化までの期間をKaplan-Meier法にて解析し,多血化にかかわる因子をCox比例ハザードモデルにて解析した.【結果】53名の患者に121個の乏血性結節を認めた.累積多血化率は1年7%,2年14%,3年30%,4年45%であった.多血化のリスクとしてHCV感染(HR4.913,P=0.003),結節サイズ10mm以上(HR5.316,P=0.000),結節発見時年齢65歳以上(HR6.331,P=0.003),男性(HR2.178,P=0.002)が統計学的に有意な因子としてあげられた.【結語】肝癌の既往のない慢性肝疾患患者においてもEOB-MRI肝細胞相で低信号となる乏血性結節は高頻度に多血化していた.しかし,1年7%,4年で45%という頻度を考慮すると多血化を確認してからの治療でよい可能性がある.
索引用語