セッション情報 シンポジウム7

早期肝臓癌画像診断の到達点と治療選択

タイトル S7-11:

進行型肝細胞癌切除前のEOB-MRIで発見された乏血性早期肝細胞癌を進行肝細胞癌切除時に同時治療することは肝切除後の無再発生存率を向上させる

演者 松田 政徳(山梨大学第一外科)
共同演者 雨宮 秀武(山梨大学第一外科), 藤井 秀樹(山梨大学第一外科)
抄録 【はじめに】EOB-MRIの導入から5年以上を経過した現時点で,進行型肝細胞癌(pHCC)の術前検査で発見された乏血性早期HCC(eHCC)をpHCC切除時に同時治療することが術後成績に与える影響を明らかとすることを目的とした.【対象と方法】2008年のEOB-MRI導入後3年間のHCC治癒切除症例77例(施行例)と,それ以前の3年間の治癒切除例70例(非施行例)を対象とした.術前画像診断はEOB-MRI以外は全例でエコー,造影CT,血管造影,血管造影下CT(従来画像)を実施した.施行例では切除対象の進行型HCC以外に従来画像およびEOB-MRIで発見されたeHCCは可及的に切除または焼灼治療した.全経過で術後経過観察は同様に実施し,多血性HCCの検出時を再発診断時とした.【結果】EOB-MRI施行77例と非施行例70例で,年齢,性別,肝炎ウイルス感染状況,糖尿病併存率,アルコール多飲歴,肝障害度,p-Stage,進行型HCCの腫瘍数,腫瘍径,脈管侵襲,肝硬変併存率に差は認められなかったが,DCPは非施行例で高値であった(p=0.02).eHCCの発見症例数は施行例で多かった(17 vs 6,p=0.04).無再発生存率は1年,3年,5年の順に施行例が81.4%,62.6%,48.7%,非施行例が82.1%,41.5%,25.5%と1年以内の再発率は同等であったが,2年以降は施行例で良好で,有意差を認めた(P=0.01).一方,累積生存率は1年,3年,5年累積生存率の順に施行例が98.7%,90.7%,80.8%,非施行例が97.0%,86.3%,72.4%と現時点で有意差を認めなかった(P=0.38).また,無再発生存に関与する因子の多変量解析でも,EOB-MRI施行は有意な因子であった.【考察】EOB-MRI施行によりeHCCの発見率が高まり,これらの同時治療により切除後の無再発生存率の向上が再度確認された.また,累積生存率も一年前の検討に比較して向上し,今後差が認められる可能性がある.
索引用語