セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-1:

生活習慣病と逆流性食道炎の相関についての経時的検討

演者 守屋 昭男(三豊総合病院消化器科)
共同演者 寺澤 裕之(三豊総合病院消化器科), 安東 正晴(三豊総合病院消化器科)
抄録 【目的】生活習慣病と消化器疾患の関連が指摘されているが,多くのエビデンスは横断研究に基づいたものである.今回われわれは特に胃食道逆流症(GERD)と生活習慣病との関連について経時的に検討した.【方法】当院人間ドック受診者のうち,2008年と2011年の両方で上部消化管内視鏡検査を受けた686名(男性408名,女性278名,年齢中央値53歳)を対象とした.2008年の時点でGERD治療中の受診者は除外した.肥満(BMI 25以上),腹部肥満(腹囲85cm以上[男性]または90cm以上[女性]),高血圧(血圧130/85mmHg以上または高血圧治療中),脂質異常症(HDL-C 40mg/dl未満,TG 150mg/dl以上,または脂質異常症治療中),耐糖能異常(空腹時血糖110mg/dl以上または糖尿病治療中)の経時的な変化(正常維持/異常持続/発症/軽快)について,上部消化管内視鏡検査で診断されたGERDの新規発症・軽快との関連をロジスティック回帰分析を用いて解析した.【成績】ベースラインにおけるGERDの有病率は78/686例(11.4%)であり,単変量解析では腹部肥満,高血圧,脂質異常症,男性がGERDの正の危険因子だったが,これらの組み合わせによる多変量解析では腹部肥満(P=0.00174)および男性(P=0.00267)のみが有意であった.3年後のフォローアップにおいてGERDの新規発症は80/608例(13.2%)に認められた.単変量解析では高血圧発症(OR=2.20[95%信頼区間=1.19―3.98]),脂質異常症改善(2.74[1.34―5.37]),耐糖能異常発症(2.98[1.19―6.88])が有意な正の因子として認められた.これらの因子で多変量解析を行ったところ,いずれも有意であった.またGERDの軽快は29/78例(37.2%)に認められ,腹部肥満の解消(6.56[1.16―52.89])が有意な正の因子として認められた.【結論】いくつかの生活習慣病において新規発症と軽快は,それぞれGERDの新規発症と軽快に相関していた.一方で,脂質異常症の改善についてはGERDの新規発症と有意に関連していた.
索引用語