セッション情報 |
シンポジウム8
生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開
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タイトル |
S8-3:TGR5 agonist/DPPIV阻害剤の腸炎抑制効果
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演者 |
坂中 太輔(大阪医科大学第二内科) |
共同演者 |
井上 拓也(大阪医科大学第二内科), 樋口 和秀(大阪医科大学第二内科) |
抄録 |
【目的】胆汁酸がリガンドとして作用するTGR5の活性化は腸内分泌L細胞からGLP-1分泌を促進させることから,糖・脂質代謝異常に対する新たなアプローチとして注目されている.一方でL細胞はintestinotrophic effectを有するGLP-2も分泌し,DPPIVにより不活性化される.しかし消化管粘膜傷害への効果は不明であることから,今回我々はTGR5 agonistとDPPIV阻害剤の腸炎に対する効果をラットインドメタシン小腸潰瘍モデルおよびマウスDSS腸炎モデルで検討した.【方法】TGR5 agonist,DPPIV阻害剤にはそれぞれbetulinic acid(BTA),sitagliptin(STG)を用いた.小腸潰瘍はSDラットにインドメタシン(10mg/kg)を単回投与して作成し,24時間後に潰瘍の長さをulcer scoreとしてカウントした.大腸炎はC57BL/6マウスに5%DSSを7日間自由飲水させることにより作成した.【成績】SDラットにBTA(50mg/L自由飲水)を投与したところ,回腸粘膜内のGLP-2濃度は有意に上昇し,小腸潰瘍モデルにおいて用量依存性に潰瘍の発生を抑制していた.効果はSTGを併用投与することにより促進され,GLP-2 antagonistであるGLP-2(3-33)100μg/kg皮下投与にて部分的に抑制された.一方,DSS腸炎においてもBTAは用量依存性に腸炎を抑制していたが,STG併用による粘膜内DPP活性抑制効果および粘膜内活性型GLP-1濃度の上昇は認めず,粘膜保護効果の促進も認められなかった.大腸ではDPP family memberであるDPP-8,-9が,DSS腸炎でfibroblast activation protein(FAP)が高発現し,粘膜内DPP活性が有意に上昇していたことから,他のDPP family member(FAP)に依存したDPP活性の上昇が原因と考えられた.GLP-2(3-33)をBTAと併用投与したところ,用量依存性にBTAの粘膜保護効果は抑制された.【結論】BTAはGLP-2作用を介した粘膜保護作用を有し,小腸ではDPPIV阻害剤を併用することによりこれらの作用は促進された.代謝異常へのアプローチとして注目されるTGR5 agonist/DPPIV阻害剤は消化管粘膜傷害に対しても有用であることが示唆された. |
索引用語 |
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