セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-4:

全大腸内視鏡検査で10年以上観察症例での,生活習慣病と大腸癌との関連について

演者 三谷 圭二(自衛隊中央病院消化器内科)
共同演者 箱崎 幸也(自衛隊中央病院消化器内科), 小針 伸一(自衛隊中央病院消化器内科)
抄録 【目的】生活習慣病,特に高血糖は大腸癌の危険因子と考えられているが,疫学データや5年未満のS状結腸内視鏡検査を用いた研究による.今回,全大腸内視鏡検査(total colonoscopy;TCS)で10年以上経過観察し得た症例をもとに,大腸癌発生と生活習慣病関連検査値との関係を後ろ向きコホート研究で検討した.
【方法】1985年~2004年に初回TCSを実施し,10年以上TCSで経過観察出来た611例(年齢中央値:46歳,男性:94%)を対象とした.初回検査時に,空腹時採血を実施し血糖・総コレステロール・中性脂肪・尿酸を検査した.初回TCSで5mm以上腫瘍を全てEMR等で切除し,「semi-clean colon」で観察を開始した.5mm以上腺腫・癌腫の累積発生と生活習慣病関連検査値との関連を検討した.
【成績】累積腫瘍(腺腫・癌腫)発生率と血糖値との検討では,血糖値110mg/dl以上では累積腫瘍発生率は高率であった(Kaplan-Meier analysis;p=0.013 by the log-rank test,glucose<110 vs. glucose 110-125,p=0.014,glucose<110 vs,glucose≧126).Cox’s比例ハザードモデルでは,累積腫瘍発生率と血糖値110 mg/dl以上は有意な危険因子であった(hazard ratio[HR],1.65;95% CI, 1.33-1.94).他の検査値(総コレステロール・中性脂肪・尿酸)と累積腫瘍発生率には有意な相関は認められなかった.
【結論】今回の結果から,TCSで10年以上経過観察し得た症例では,大腸腫瘍発生と高血糖との強い関連性が示唆された.
索引用語