セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-6[追]:

大腸ポリープ患者における大腸組織内脂肪蓄積―メタボリック・シンドロームとの関連性

演者 和田 世里子(兵庫県立西宮病院消化器内科)
共同演者 安永 祐一(兵庫県立西宮病院消化器内科), 河田 純男(兵庫県立西宮病院消化器内科)
抄録 背景:メタボリック・シンドローム(MS)と肝,骨格筋,心筋における異所性脂肪蓄積との関連は知られているが,大腸における脂肪蓄積の報告はない.一方,インスリン(Ins)抵抗性やアディポネクチン(ADN)等MS関連因子が大腸腺腫や大腸癌発生の独立した危険因子であることが示唆されている.
目的:大腸ポリープ患者の大腸組織内に異所性脂肪蓄積があることおよび大腸組織内脂肪蓄積がMSに関連することを明らかにする.
患者・方法:大腸ポリープ患者27名(腺腫22名,腺腫内癌4名,若年性ポリープ1名)を対象に,内視鏡的に切除した大腸ポリープの非病変部組織(100mg)を用いて,組織内中性脂肪(TG),コレステロール(TC),リン脂質(PL)含量を測定した.TGのPLに対する比(TG/PL)を空腹時血糖,Ins,ADN,Ins抵抗性の指標HOMA-IR等と比較した.また,脂肪蓄積の局在を明らかにするため,腹腔鏡下大腸切除術を施行した大腸癌患者4名の非腫瘍部組織を用いて,脂肪滴膜蛋白perilipinに対する抗体による免疫染色を行った.
結果:年齢は中央値65歳(35-86歳),男性15名,女性12名.TG/PL中央値は0.22(0.019-5.3),TC/PL中央値は0.333(0.261-0.404)であった.血清TG,TC,LDL-C,Ins,HOMA-IRのそれぞれで,中央値以上群と未満群を比較すると,TG/PLは前者で有意に高値を示した(P値はそれぞれ0.002,0.005,0.023,0.004,<0.001).逆にTG/PLの値により低,中,高3群に分けて比較すると,有意にTG/PLを増加させる要素は,BMI,血清TG,TC,LDL-C,Ins,HOMA-IR,ADNであった(P値はそれぞれ0.047,0.025,0.013,0.001,0.045,0.018,0.046).免疫染色にて大腸粘膜下組織に脂肪滴の存在が示された.
結論:大腸ポリープ患者において,大腸粘膜下組織に脂肪蓄積があることが明らかになった.大腸粘膜下の脂肪蓄積とMSとの関連性が示唆された.
索引用語