セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-7:

全国調査からみた急性膵炎における生活習慣病

演者 菊田 和宏(東北大学消化器病態学)
共同演者 正宗 淳(東北大学消化器病態学), 下瀬川 徹(東北大学消化器病態学)
抄録 【目的】急性膵炎(AP)は患者背景の違いにより予後が異なることが知られるが,その病態における生活習慣病の関与については未だ不明な点が多い.今回,全国調査のデータに基づいて疫学的検討を行った.
【方法】2007年1年間に受療した患者を対象に行われた厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班の急性膵炎,重症急性膵炎の全国調査で集積されたAP症例2256例を対象とした.年齢,性別,Body mass index(BMI),糖尿病,脂質異常症,高血圧,成因,臓器不全,予後の相関を検討した.
【成績】肥満(BMI25以上)は,同年の厚生労働省国民健康・栄養調査結果(男性の29.3%,女性の19.5%が肥満)と比較し,アルコール性APでは少なく(男性18.4%,女性7.7%),胆石性APでは多かった(男性33.3%,女性29.4%).BMI30以上で臓器不全が増加する傾向にあるが,死亡リスクの増加は認めなかった.糖尿病はAPの12.8%に認められ,前述の国民調査結果と比較すると50歳未満の若いAPで合併率が高かった.糖尿病合併APは臓器不全出現頻度が高い傾向にあり,膵炎関連死亡リスクは糖尿病非合併例の2.3倍(95%信頼区間1.1-4.8)であった.成因別では,アルコール性では糖尿病の有無による予後の違いは明らかでなかったが,特発性は糖尿病合併例の膵炎関連死頻度が9.4%と高かった.脂質異常症と高血圧の有無と臓器不全や膵炎関連死の相関は明らかでなかった.
【結論】急性膵炎の患者背景は多様であり,成因や年齢の違いにより,APの病態における生活習慣病の重みが異なることが示唆された.特に糖尿病合併特発性APは注意を要する病態と考えられた.
索引用語