セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-8[追]:

肥満,糖尿病関連遺伝子多型と膵癌についての多施設共同研究

演者 来間 佐和子(東京都立駒込病院消化器内科)
共同演者 江川 直人(東京都立松沢病院内科), 菊地 正悟(愛知医科大学公衆衛生学)
抄録 【目的】肥満,2型糖尿病と膵癌の疫学的関連は知られているが,その関連を説明する遺伝要因や遺伝要因と生活習慣の交互作用については明らかでない.多施設共同症例対照研究により,肥満と関連が強いFTO遺伝子や,2型糖尿病関連遺伝子の多型と膵癌リスクの関連を検討した.【方法】2010年1月から2012年5月まで5施設で診断された膵癌360例を症例,参加施設において収集した悪性腫瘍以外の400例を対照とした.多変量解析でオッズ比と95%信頼区間を算出し,肥満,糖尿病関連遺伝子であるFTO(rs9939609),PPARG2(rs1801282),ADIPOQ(rs1501299),ADRB3(rs4994),KCNQ1(rs2237895),KCNJ11(rs5219),TCF7L2(rs7903146),CDKAL1(rs2206734)の一塩基多型と膵癌リスクの関連を評価した.【成績】年齢,性別で調整後,FTO(rs9939609)において,TT遺伝子型と比較し,TA遺伝子型のオッズ比は1.49(1.09-2.03),AA遺伝子型のオッズ比は1.49(0.67-3.29)であった.年齢,性別で調整後,ADIPOQ(rs1501299)において,AA遺伝子型と比較しAC遺伝子型のオッズ比は1.79(95%CI:0.98-3.23),CC遺伝子型のオッズ比は1.86(95%CI:1.03-3.38)と有意に高く,一塩基多型と膵癌について正の関連を認めた.それとは対照的に,年齢,性別,BMI,糖尿病の既往,喫煙歴で調整後,KCNQ1(rs2237895)においてAA遺伝子型と比較しCC遺伝子型のオッズ比は0.57(95%CI:0.34-0.96)と有意に低く,一塩基多型と膵癌について負の関連を認めた.【結論】FTO(rs9939609),ADIPOQ(rs1501299),KCNQ1(rs2237895)に膵癌との関連が見られたが更なる追試により関連性を確認する必要がある.今回の結果よりインスリン分泌より,インスリン抵抗性が膵癌リスクに有意に関連していることが示唆された.
索引用語