セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-9[追]:

生活習慣病に注目した膵癌高危険群の囲い込み

演者 深澤 光晴(山梨大学第一内科)
共同演者 依田 芳起(山梨厚生連健康管理センター), 榎本 信幸(山梨大学第一内科)
抄録 【目的】地域の検診施設と大学病院の共同研究により,生活習慣病と膵癌の関連について解析し,高危険群の囲い込みを試みた.【方法】2001-2011年に両施設で診療した膵癌305例中,過去の検診所見が得られた163例(P群)を対象とし,非膵癌検診受診者から年齢性を一致させランダムに抽出した1630例をコントロール(C群)とした.検討1:膵癌発見の前年のデータをコントロール群と比較し,膵癌の発癌危険因子を同定する.検討2:生活習慣病関連データの経時的変化を解析し,経時的変化による高危険群を抽出する.【成績】検討1:膵癌発症前データについて膵癌群とコントロール群で比較すると,喫煙(P群31%/C群10%),糖尿病(24%/13%),飲酒3合以上(8%/2%),BMI(23.2/22.3)で両群間に有意差を認め,危険因子と考えられた.検討2:膵癌発症に関与する因子について,生活習慣病関連因子(BMI,TG,Tcho,HbA1c,脂肪肝,胆石)の経時的変化について多変量解析を行うとBMI(OR 0.48,95%CI:0.383-0.606,P<0.01),HbA1c OR 6.79,3.895-11.832,P<0.01)が独立した危険因子であった.BMIとHbA1cの変化をそれぞれ3群(低下,不変,上昇)に分け,組み合わせにより9分類すると,コントロールではBMI不変/HbA1c不変が最も多く70%を占めるのに対し(膵癌群16%),膵癌ではBMI低下/HbA1c上昇が30%と最も多く(コントロール群1%),分布に差が認められた.両者不変を1としてグループごとの膵癌危険度を算出すると,BMI低下/HbA1c上昇群は80倍と最も高値であった.BMI低下/HbA1c上昇症例のStageは,I:0例,II:1例,III:4例,IVa:6例,IVb:16例であり進行例が多い傾向にあったが,10例(37%)は手術適応例であった.【結語】生活習慣病と膵癌の関係が示唆され,危険因子およびBMI/HbA1cの経時的変化が高危険群の囲い込みに有用である.
索引用語