セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-10:

脂質異常症と胆石症病態~コレステロール吸収阻害による代謝変動からみた診療のあり方~

演者 岸川 暢介(広島大学病院総合内科・総合診療科)
共同演者 菅野 啓司(広島大学病院総合内科・総合診療科), 田妻 進(広島大学病院総合内科・総合診療科)
抄録 【背景と目的】脂質異常症は胆石形成のリスクファクターとされる.2型糖尿病ではNPC1L1を介する腸管コレステロール吸収亢進が胆汁脂質過剰排泄を惹起する.本研究では脂質異常症を有する胆石症患者にNPC1L1選択的阻害剤Ezetimibe投与して脂質代謝動態の変動を評価し胆石症への治療的意義を検討するとともに,その機序を肝胆道系NPC1L1発現とその動態から探索した.【方法】1.臨床的検討:本研究の趣旨に同意を得た脂質異常症を伴う胆石症患者11例(非手術例7例,胆摘後4例)を対象にEzetimibe(10mg/day)を1年間投与して血清脂質,コレステロール合成マーカーLathosterolおよび吸収マーカーCampesterolを解析するとともに,デヒドロコール酸投与による分泌刺激にて内視鏡的に回収した十二指腸胆汁の脂質分析を行なった.2.基礎的検討:ヒト肝細胞株(HepG2),ヒト胆嚢上皮細胞株(OCUG1)にLXRのリガンドである酸化ステロール(22(R)-hydroxycholesterol)を投与し,LXRの下流遺伝子の発現を評価した.【成績】1.血清脂質分析では全胆石症にて胆摘の有無に関わらず総コレステロールおよびLDLコレステロールは有意に低下し,コレステロール吸収指標も有意に低下したが,コレステロール合成指標は増加する傾向にあった.一方,胆汁脂質では胆摘例では催石指数が上昇したが非手術例では有意な変化を示さなかった.2.NPC1L1はヒト肝細胞および胆嚢上皮細胞においてmRNAレベルでの発現が確認された.Ezetimibe投与下でLXRの下流遺伝子発現が低下した.【考察と結語】Ezetimibe投与により胆摘例で胆汁コレステロールの相対的上昇を認めたが,非手術例では不変だったことから,リザーバー機能を有する胆嚢による胆汁脂質代謝の安定性に寄与する可能性が示された.胆嚢に選択的コレステロール吸収担体NPC1L1の発現を認めたことから,肝臓胆嚢間の微小循環による胆汁脂質安定化メカニズムの存在と胆摘によるその破綻が推定された.
索引用語