セッション情報 |
シンポジウム8
生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開
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タイトル |
S8-11:抗糖尿病薬Metforminよる消化器系癌細胞増殖の抑制機構―MetforminのターゲットmicroRNAの同定
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演者 |
加藤 清仁(香川大学医学部消化器神経内科) |
共同演者 |
鎌田 英紀(香川大学医学部消化器神経内科), 正木 勉(香川大学医学部消化器神経内科) |
抄録 |
【目的】近年,糖尿病と癌罹患リスクとの関連が注目されているが,抗糖尿病薬であるMetforminは,疫学的研究,前臨床試験,臨床試験において抗腫瘍効果を持つことが報告されている.今回,我々は,Metforminの消化器癌に対する抗癌作用を培養細胞株,実験モデル動物を用いて検討した.【方法】1.in vitroの系:各々の消化器癌細胞株を用いてMetformin投与による細胞増殖をcell proliferation assayにより検討し,種々の細胞周期関連分子の発現動態はWestern blot法により検討した.また,Metformin投与により,誘導されるmiRNAsを1000分子が搭載されたアレイを用いて網羅的に検討した.2.in vivoの系:癌細胞株をヌードマウスに皮下移植し,Metforminが,in vivoにおいても増殖を抑制するかを検討し,Metformin投与による細胞周期関連分子,miRNAsについても,in vitroの系と同様に検討した.【結果】1.in vitroの系:Metfromin投与は非投与群と比較して,全ての癌細胞株で増殖は抑制されていた.Metformin投与群は非投与群と比較し,CyclinD1,Cdk4,Cdk6などの細胞周期関連タンパクの発現,Rb,EGFR,IGF-1Rなどのリン酸化は抑制されていた.また,フローサイトメトリーにおける検討でも,Metformin投与は,各種消化器癌細胞株をG1停止に導いていた.また,Metformin投与により,miRNAsの発現動態が有意に変化し,癌抑制効果があるとして報告のあるmiRNAsの発現昂進も認められた.2.in vivoの系:Metformin投与群では,その腫瘍体積を顕著に抑制し,さらに,細胞周期関連分子,miRNAsの動態変化もin vitroの系に類似部分を認めた.【結論】Metforminがこれら消化器系悪性腫瘍に対し抗腫瘍効果を持つことをin vitro,in vivoの系において証明した.これら結果から,糖尿病罹患者及び癌発生リスクが増加する昨今の背景のもと,Metforminは糖尿病患者に対して非常に有効な治療薬であるとともに,化学療法への併用などの臨床応用の可能性も示唆された. |
索引用語 |
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