セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-13:

喫煙による肝細胞オートファジー抑制を介した脂質代謝障害

演者 山科 俊平(順天堂大学医学部消化器内科)
共同演者 池嶋 健一(順天堂大学医学部消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大学医学部消化器内科)
抄録 [目的]喫煙は生活習慣病の原因の一つであり,慢性肝炎において生活習慣病の合併は肝障害増悪因子として重要である.また喫煙者では非喫煙者と比べ有意に肥満の割合が少ない一方で,BMIが同程度の場合には非喫煙者と比べ内臓脂肪沈着が多いことが報告されている.我々はニコチンが細胞内蛋白分解機構の一つであるオートファジー誘導を抑制することを報告してきた.オートファジーは脂肪滴代謝にも関与することから肝細胞内脂肪滴蓄積や代謝においてもニコチンによるオートファジー機能障害が関与する可能性が考えられた.オートファジーを介した脂質代謝に対する喫煙の作用について検討を行った.[方法]C57BL/Cマウスより単離した肝細胞をオレイン酸1mM含有培養液にて6時間培養した.その後,オレイン酸非含有培養液(ニコチン10-5M含有群,非含有群)に置換し12時間培養を行った.細胞内脂肪滴をLipidTOX Deep Redにて染色し共焦点蛍光顕微鏡下で観察し評価した.脂肪滴膜蛋白Perilipin,オートファジー関連蛋白LC-3発現やmTOR活性化をWestern blot法により評価した.[結果]オレイン酸添加6時間後に肝細胞内に脂肪滴蓄積が観察された.その後,オレイン酸非含有培養液にて培養を行うと12時間後に肝細胞内脂肪滴とPerilipin発現は減少するが,ニコチンを添加すると細胞内脂肪滴とPerilipinの減少が抑制された.またオレイン酸非含有培養液によって培養を行うとmTOR活性化が抑制されLC3-II発現が有意に増加したがニコチン存在下ではmTOR活性化は持続しLC3-II発現が抑制された.一方,ラパマイシンをニコチンに同時添加すると12時間後には通常の培養液で培養した時と同様に肝細胞内の大滴性脂肪滴蓄積はほぼ消失していた.[結論]ニコチンは肝細胞内の脂肪滴代謝を阻害する作用を有すると考えられた.喫煙が内臓脂肪を増加させる作用の一端に,ニコチンによる肝細胞へのmTOR活性化を介した脂質代謝抑制が関与している可能性が示唆された.
索引用語