セッション情報 シンポジウム8

生活習慣病と消化器疾患・病態生理学の新たな展開

タイトル S8-14:

微量エンドトキシンは肝MTTP抑制による脂質排泄障害を介して脂肪肝炎病態進展に関与する

演者 今城 健人(横浜市立大学医学部附属病院消化器内科)
共同演者 小川 祐二(横浜市立大学医学部附属病院消化器内科), 中島 淳(横浜市立大学医学部附属病院消化器内科)
抄録 【目的】腸管由来エンドトキシン(ET)は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)病態進展に関わるとされる.我々はこれまで脂肪肝における炎症の惹起には脂肪細胞より分泌されるレプチンがクッパー細胞におけるCD14発現を亢進することにより腸管由来ETへの過剰応答が関与することを報告した.さらに脂質代謝の分野においてヒトNASHでは肝における脂質排泄のkey factorであるMTTPが低下していることを報告した.今回,我々は微量の腸管由来ETが肝MTTPを低下させることで脂質排泄障害を生じNASH病態を進展させる可能性を考慮し検討した.【方法】(1)肝細胞の細胞株であるHepG2細胞を用いて大腸菌由来LPS及び炎症性cytokine添加後のMTTP発現を検討した.(2)12週間の高脂肪食飼育下wild type(WT)マウスに対し一回投与では肝障害が惹起されない量の超低量LPS(0.01mg/kg)を14日間腹腔内投与し肝障害が惹起されるかを検討した.また肝MTTP発現についても超低量LPS一回投与及び14日間投与後に検討した.(3)MTTP低下が肝臓に及ぼす影響を検討するために肝細胞特異的MTTPKOマウス(Alb-Cre+/MTPfl/flマウス)を作成した.同マウスへ高脂肪食を28日間投与し肝障害が惹起されるかを検討した.コントロールとしてAlb-Cre-/MTPfl/flマウスを使用した.【成績】(1)HepG2細胞では炎症性cytokine添加によりMTTP発現が低下すると共に細胞内脂肪蓄積を誘導した.(2)超低量LPS一回投与では高脂肪飼育下WTマウスの肝MTTPを著明に低下させた.また同マウスへ超低量LPSを14日間投与すると,PBSを投与した同マウスに比し有意に肝障害が増悪した.(3)肝細胞特異的KOマウスは高脂肪飼育によりコントロールマウスと比し有意に肝障害が惹起された.【結論】微量のETであっても生体内では肝MTTPが抑制されることで肝脂質代謝障害が惹起され,脂肪肝炎病態が進展する可能性が示唆された.肥満によるET感受性亢進が契機となり微量のETであっても脂質代謝障害を介してNASH病態を進展させる可能性が示唆された.
索引用語