セッション情報 シンポジウム9

膵胆道疾患におけるInterventional EUSの有用性と問題点

タイトル S9-1:

EUS-FNAによる膵腫瘤診断の標準化を目指して~診断能向上への工夫~

演者 佐藤 高光(愛知県がんセンター中央病院消化器内科)
共同演者 原 和生(愛知県がんセンター中央病院消化器内科), 山雄 健次(愛知県がんセンター中央病院消化器内科)
抄録 【背景・目的】超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)は膵腫瘍の治療前pathological evidenceを得る診断法として確立してきているが,施設間における診断能に差があるのが現状である.当院では迅速細胞診(ROSE)とcell blockの併用,KRAS遺伝子解析により診断能の向上と偶発症の低下に努めてきた.自験例から診断能向上に関する因子を明らかにすることを目的とした.【方法】1997年3月~2013年9月までに当センターでEUS-FNAを施行した3200例のうち,最終診断の得られた膵腫瘤1041症例(1100病変)を対象とした.EUS-FNAの正診率に影響を及ぼす因子および偶発症について検討した.【結果】最終診断は悪性953病変(膵管癌830病変,膵神経内分泌腫瘍62病変,転移性膵腫瘍28病変,SPN9病変),良性147病変であった.細胞診とcell blockを併用した場合,検体採取率99.3%(1092/1100),正診率92.0%(1012/1100),感度91.8%(875/953),特異度97.3%(143/147)であった.細胞診のみでは正診率85.9%,感度88.3%,特異度95.1%であり,cell block併用でEUS-FNAの診断能は有意に向上した.またKRAS遺伝子解析を行うことで正診率の上乗せ効果が得られた.EUS-FNAの正診率に及ぼす因子を多変量解析すると,膵体尾部病変(P=0.01;OR=1.70),病変の大きさ>20mm(P<0.01;OR=2.62),ROSEの併用(P<0.01;OR=15.74),2007年以降のEUS-FNA(P=0.02;OR=1.43)が独立した因子であった.合併症は0.85%(8/936)に認め,内訳は出血(Hb 2g/dL以上の低下)6例,門脈血栓1例,脾動脈瘤破裂1例であった.【結論】膵腫瘤に対するEUS-FNAの診断能は高く,合併症は低率であった.診断能向上にはROSEとcell blockを併用しKRAS遺伝子解析を行うことが有用であった.膵頭部病変や20mm以下の小病変の場合は偽陰性となる可能性があるため注意が必要であると思われた.
索引用語