セッション情報 シンポジウム9

膵胆道疾患におけるInterventional EUSの有用性と問題点

タイトル S9-6:

癌性疼痛に対するEUS下腹腔内神経叢融解術の有用性とその適応

演者 坂本 洋城(近畿大学医学部消化器内科)
共同演者 北野 雅之(近畿大学医学部消化器内科), 工藤 正俊(近畿大学医学部消化器内科)
抄録 【目的】癌性疼痛は,最もQOLを損なう症状の一つである.CPNは,腹腔神経叢周囲に薬液を注入する疼痛緩和療法である.がん疼痛治療ガイドラインではCPNは腹腔内臓器の癌性疼痛に対する除痛法の第一選択であり,鎮痛薬投与に先行し行うことを考慮するよう推奨されている.EUSガイド下CPN(EUS-CPN)は,リアルタイムに針先を観察しながら穿刺を行うことが可能で,他の到達法と比較すると容易であり合併症が少ないという点で優れている.近年ではEUS下広範囲腹腔内神経叢融解術(EUS-BPN)や,EUS下腹腔神経節融解術(EUS-CGN)などの新たな疼痛緩和療法が試みられて.今回我々は,こられのEUS下腹腔内神経叢融解術の有用性およびその効果に影響する要因を検討した.【方法】癌性疼痛を有する手術不能膵癌134症例に対しEUS-CPN,BPN,CGNを施行した.疼痛の程度はVASを用い11段階に評価し,手技7日後にVASの改善度を測定した.VASの改善度が2以下を無効,3以上を有効,7以上を著効とした.水溶性造影剤を含有したエタノールを用い,処置後の腹部CTにて薬剤の注入範囲を6領域に分けた.検討項目:stage,腫瘍部位,腫瘍サイズ,腫瘍マーカー,麻薬使用量および薬剤注入部位領域数.【成績】男女比は6;4,平均年齢64歳,28例(21%)はPS 1または2であり,103例(77%)は化学療法前または投与中で,29例(22%)に少量から中等度の腹水を認めた.全体の疼痛緩和効果の有効率は81%(有効率;56%,著効率25%)であった.エタノール注入領域が多いほど疼痛緩和効果を認めた.腫瘍サイズが30mm以下と麻薬使用量が少ない場合において有意に著効例が多かった.21例(16%)に一過性の血圧低下,酌酊および疼痛増強を認めたが,重篤な合併症は認めなかった.【結語】癌性疼痛に対するEUS下腹腔内神経叢融解術はPS不良例や中等度の腹水でも施行可能であり,安全かつ有用な手段であった.薬剤注入領域と麻薬使用量が疼痛緩和効果の重要な因子であり,腫瘍サイズが30mm以下では疼痛緩和効果の著効が期待されると示唆された.
索引用語